どうやってユーザーを拡大していったんですか?
川村 びっくりするくらい反応がない状態のとき、どうあがいたんですか?
舛田 個人的には大嫌いな戦法なんですけど、「会員登録をするとギフト券をもらえるよ」みたいなプロモーションをやってみたりもしました。でも、20万人分用意したのに、12万人分くらい残ってしまって(苦笑)。
川村 失敗ですね(苦笑)。最終的にはどう火が付いていったんですか?
舛田 当初は単純に電話番号帳と連動した1対1のメッセンジャーでしかなかったんです。だから、ツイッター上でも「これは使いやすい」というコメントはあっても、口コミには至らなかった。でも、その後に「スタンプ」と「無料通話」を導入したことで、「変な表情をしたスタンプがいっぱい使えて、電話も無料で、すごく使えるメッセンジャーアプリがあるよ」って話が広がった。その頃になるとツイッターやLINEの中にある招待機能を介して勧めてくれる人も増えてきました。
川村 最後のトドメはあったんですか?
舛田 口コミというのを分析していくと、そこには必ず言葉の引き金があるんですよね。そこで、初のテレビCMにベッキーさんに出てもらって、彼女の台詞を通じてLINEの価値を普及してもらいました。結果、「ベッキーがCMに出てるアプリ」ってことでやっと口コミが広まって、登録ユーザーが1000万を突破して、ようやくビジネス層にも広がっていった感じでしたね。
川村 ネットの世界の口コミは本当に強いと思うんですが、その背景を細かく解析をした結果が、ブレイクスルーにつながったんですね。
舛田 もともとツイッターが好きすぎて、ツイッターにかじりついて、そこでコミュニケーションをしていたんですけど、「いいね!」を1万回押されても、シェアを1万回やってもらっても、響かないものはやっぱり響かない。口コミにつながるのは、あくまで強い意志を持って発せられた言葉の力なんです。
川村 強い意志、ですか。
舛田 はい。もちろんその後ろでは「どうやったら数字が上がるんだろう」ってことはやっているんですよ。でも、“数字に強い人”というのは、数字が的確に読めるとか、数字をあるがままに受け入れられるとかだけでなく、数字から人間の次の行動を抽出できる人でもある。サイエンスだけでなくアートも両方をかき回して考えられる脳が、マーケティングには必要だと思います。