やはり分かりやすいのは、赤身の牛肉と比較することだろう。とは言え、同じ赤身部分でも、脂肪分の多いロースなどと比較するのでは不公平の謗りを免れないであろうから、赤身牛肉の代表としては、黒毛和牛(去勢)のヒレ肉を選ぶことにする。一方、鯨肉の代表としては、本来、新旧の主役であるナガスクジラかイワシクジラを代表に据えるべきだろうが、両者のデータがないため、同じヒゲクジラ亜目に属するミンククジラ(皮下脂肪及び筋間脂肪を除いたもの)と比較することにする。

 【表1】に「100gに含まれる栄養素」のうち、大きな差が認められるものを整理した(ともに炭水化物はほとんど含まれず、ミネラル類とビタミン類には大きな差は見られない)。念のため、鯨肉とよく比較される馬肉も並べている。

 一目瞭然なのが、脂質とコレステロールの含有量の差である。エネルギー(カロリー)の違いは、脂質の含有量の差によると考えてよいので、ここでは無視してよいだろう。

 飽和脂肪酸(パルミチン酸やステアリン酸が代表的)、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸が代表的)、二価不飽和脂肪酸(リノール酸が代表的)を足し合わせても脂質の量に満たないのは、脂質としてはこれら以外に多価不飽和脂肪酸が含まれているからである。「鯨肉には、血液をサラサラにするエイコサペンタエン酸(EPA)や脳を活性化するドコサヘキサエン酸(DHA)などが豊富に含まれている」という主旨のことを目にされたことのある向きも少なくないと思うが、その名のとおり、EPAは五価、DHAは六価である。

 しかし、EPAやDHAが“豊富に”含まれているという説明は、厳密には不適切である。豊富に含まれているのではなく、「脂質に占める多価不飽和脂肪酸の割合が多い」が正しい。

 飽和脂肪酸やコレステロールの摂り過ぎからくる健康への影響に関しては、本欄で論ずるまでもないと思われるので割愛する。