鯨肉は最高の筋持久力向上&疲労回復食かも!?

 そしてもう一つ、鯨肉に(相対的に)多く含まれる栄養素として注目すべきは「バレニン」である。バレニンとは――やや専門的になってしまうが――イミダゾール基を含むアミノ酸からなるペプチド(イミダゾールジペプチドと総称され、主に3種類ある)のうちの一種である。イミダゾールジペプチドは、多くの動物の骨格筋、特には鳥類の胸肉、マグロやカツオ、鯨肉など、筋持久力を必要とする筋肉に多く存在する。いずれも抗疲労作用のある生体物質とされているが、なかでもバレニンはヒゲクジラの筋肉中に多く含まれている(*1)。

 これらイミダゾールジペプチドの抗疲労作用としては、筋肉中に多く含まれていることからも、特には筋肉疲労(筋持久力)に効果があると言われている。と同時に、乳酸の分解促進、尿酸量の調節、筋pH低下の緩衝作用を持ち、イミダゾール基によって活性酸素を抑える抗酸化作用を持つことも報告されている(*2)。

 なお、イミダゾールジペプチドには主に、カルノシン、アンセリン、バレニンの3種類があるが、動物種によってそのうちのどれが多く含まれているかが異なる。例えば、マグロ、カツオ、カジキなど長距離を泳ぐ魚類や鶏などの鳥類の筋肉にはアンセリンが多く、ウシ、ブタ、アザラシ、サルなどの哺乳類にはカルノシンの比率が高く、同じ哺乳類でもヒゲクジラにはバレニンが圧倒的に多い。そして、この点が肝心なのであるが、100gあたりのイミダゾールジペプチドの総含有量を見ると、ヒゲクジラにはウシやブタの3~6倍が含まれている。

 最後に、クジラを食糧資源として持続的に利用していくことに関連しては、「陸上における畜肉生産よりも環境負荷は低い」「クジラ全体では人類の3~6倍のサカナ資源を消費している」といった指摘もされている。本欄は、それらの議論を本題とはしていないため深入りはしないが、少なくとも、「鯨肉は栄養価値が高い」ということだけは確かである。

参考資料:
(*1) 「鯨研通信 第429号 2006年3月」
(*2) 阿部広喜.2005.8.3.2 アミノ酸,ペプチド.459-468.魚の科学事典.朝倉書店.

(吉田克己)