2014年の鶏肉の消費期限切れ問題で崖っぷちに立たされたマクドナルド。今年に入ってようやく既存店売上高が回復しつつあるが、食材費率の高止まりと人材の不足という構造的な問題は抱えたままだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

「勢いを取り戻している」。日本マクドナルドホールディングスのサラ・カサノバ社長は、2016年に入って以降、このように強調する。既存店売上高が、前年同月比で1月が35.0%増、2月も29.4%増、3月は18.3%増とプラスが続き好調だからだ。

 しかし、これは「前年同月比」という数字のマジックにすぎない。というのも、14年7月に発生した鶏肉の消費期限切れ問題に伴って売り上げは激減。15年1月には異物混入事件が起きていっそう落ち込み、ハードルが大きく下がっていた。そうした事情を鑑みれば、3月の売上高は依然として2年前の水準を1割ほど下回っている。

 マクドナルドは、鶏肉問題をきっかけに2期連続の赤字となり、15年12月期は347億円と過去最大の最終赤字を記録(図(1))。結果、この2年間で自己資本は647億円も目減りし(図(2))、80%あった自己資本比率も60%になった。

 だが、それより前から、既存店売上高は前年を下回る状況が続いており、実は鶏肉問題以前から消費者の支持を失っていた(図(3))。

 背景にあるのは、利益を確保したいがために混迷を極めた価格戦略だ。

 外食産業では、「中国による食材の買い占めや円安の進行により、12年ごろから食材価格が上がり始めた」(鮫島誠一郎・いちよし経済研究所主席研究員)。その影響はマクドナルドにも当然及び、10年に31.9%だった売上高に占める食材費率が、13年には35.3%にまで3.4ポイントも上昇した(図(4))。