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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

「忘れられる権利」ガイドラインが実践運用へ

ネット被害救済への期待と付随する問題点

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第7回】 2016年4月15日
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ネット上の被害を葬る
ビジネスと警察組織

 ネット上への投稿もしかりで、ソーシャルメディア上に書き込んだ一言が問題になり、一変して人気を失う芸能人は日本でも珍しくないが、心ない投稿によって誹謗中傷を受け、自殺に追い込まれた芸能人のニュースも韓国ではしばしば耳にする。

 日本でも、ネット上の風評や誹謗中傷による被害の防止、もしくは救済をサポートする会社が増えてきた。

 韓国にも同じビジネスがあって、彼らは「インターネット葬儀屋」と呼ばれている。自分の評判に傷が付きそうな書き込みや、誹謗中傷を探してインターネット事業者に削除依頼するといった面倒な作業を請け負うのが彼らの仕事ではあるが、むしろ、就職や結婚などで身辺整理をしたい時、断捨離よりも先にこの「葬儀屋」に駆け込む人が多いという。

 特に、生まれた時からインターネットが身近にあった今の20代の若者などは、「ふざけて撮った写真がオンラインコミュニティ上に掲載されて恥ずかしいので、全部探して削除したい」「よく分からず個人情報を全てネット上に登録しまったが、すでに退会したサイトなので削除する方法がない」といった理由で、インターネット上の情報を葬ってほしいと言ってくるそうだ。

 それはさておき、もちろん、このようにネット上でさまざまな被害が叫ばれている現状を行政も黙って見ているわけではない。

 日本では2013年に警察庁が「サイバー攻撃特別捜査隊」を設置したが、韓国にはそれより以前から、インターネット上の名誉棄損や詐欺などの犯罪を専門に捜査する警察組織の「サイバー捜査隊」がある。

 例えばネットでの誹謗中傷に悩む人が、対象となる書き込みをキャプチャするなど証拠を集めてサイバー捜査隊に被害を届けると、IPアドレスやネットカフェの防犯カメラデータなどを捜査し、悪質なコメントを書き込んだ人物を特定する。近年も、大物俳優が悪質なデマに対して、サイバー捜査隊に捜査を依頼したことがニュースになった。

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趙 章恩
[ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

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