日々の仕事は無限の問題集

熊谷 僕が最初にこの本を渡されたときって、「これを読めば仕事ができるようになる」みたいな効能を期待して読んだんです、たぶん。でもそんな魔法の本なんてないじゃないですか(笑)。

 仕事で役に立つ「何か」を学ぶにあたって、人から聞いたり本から学んだりできることって実際はほとんどないと思うんです。理論が分かることと、実際に体得することには思ったより大きな隔たりがある…。当然かもしれないですけど、結局一旦やってみて失敗したり成功したりする中で徐々に肌感覚として理解していくしかない。

 で、前提として、本質的にはそういう風にしか学ぶことは出来ないと思うんですけど、その失敗や成功を繰り返す中で、指標とか纏めとしてこういう教科書みたいなものがあると、「立ち返りやすい」っていうことは、あると思います。日々の仕事は無限の問題集で、この本には公式と定義が羅列してあります、みたいな感じですかね(笑)。

 だから入社30年目くらいまではドヤ顔で使って良いんじゃないでしょうかこれは(笑)。 

岩瀬 それは嬉しいですね。時々「社畜の教科書」と揶揄されることもあるので、熊谷さんのような会社を辞めた方にそう言ってもらえると、心強いです(笑)。

熊谷 社畜の教科書という表現もどことなくシックりきて好きですが、会社辞めた後も実は本質的なことはあまり変わらない、というイメージです、僕の場合は。

岩瀬 ありがとうございます。実は、この本を作ったとき、少し心配だったんですよ。遅刻するなとか、ハキハキあいさつせよとか、ごく当たり前のことしか書いてないから、つまらないんじゃないかなと。でも、その当たり前が大事っていう話なんですよね。

熊谷 大事ですね(笑)。

岩瀬 熊谷さんは、やりたいことがそこまで具体的には決まっていない。でも、パワーはありあまっているから、いろいろなことにチャレンジをされている印象を受けるのですが、実際どうですか?