値段はいつもウソをつく
同じ銘柄のビールがコンビニAでは400円、隣のコンビニBでは350円で売られている。
この場合、お得な買い物は?
このの例題について、「コンビニBに決まっている!」と思ったお酒好きの方は、ちょっと待っていただきたい。たとえば、ビールを飲まない人にとっては、「どちらも買わない」が正解ではないだろうか。どうせ飲まないビールなら、買わないほうがマシだからだ。
また、このビールがふだんから300円で売られている商品だとすれば、やはりどちらで買っても損することになる。あるいは、1本1000円で取引されているビールなら、全部買い占めて転売するべきかもしれない(これはおすすめしないが……)。
この例からわかるとおり、僕たちは買い物や取引をするときに、価格を見比べて損得を判断しようとする。「こちらのほうが価格が安いからお得だ」とか「あっちのほうが値段が高いから、価値も高いに違いない」というように、価格同士の比較が価値判断の基準になっているのである。
しかし、価格だけをいくら見比べても、正しい判断はできない。ビールを株式に置き換えて考えてみると、よりわかりやすいだろう。
昨日1000円で取引されていたC社の株式が、今日は700円で取引されている。
今日、この株は買うべきか?
株価だけを見れば、1000円だったものが700円で買えるのだから、C社の株はまさに買い時ということになる。
しかし、株式投資の経験がまったくない人でも、ここで「買い」の判断をするほどの無邪気さは持ち合わせていないだろう。C社の株価はひょっとしたら、700円よりももっと下がる可能性があるからだ。