「ギザのピラミッド、ヴェルサイユ宮殿、現金10億円」――この3つのうち、どれでも好きなものが選べるとしたら、あなたはどれを選ぶだろうか? ほとんどの人は「現金」を選ぶはずだ。しかし、果たしてそれは、本当に「賢明な選択」だろうか?

本日より、年間500件以上の企業価値評価を手がけるファイナンスのプロ・野口真人氏による新連載がスタートする。まもなく発売となる同氏の新著『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』は、あらゆる「選択」に役立つ「4つのノーベル賞理論」が学べる一冊だ。

「カネほど価値の低いものはない!」と豪語する「ファイナンス理論」とはいったいどんな学問なのだろうか? 最新刊『あれか、これか』のなかから紹介していこう。

「いまの人生」は「過去の選択」でできている

僕たちの人生は、選択の連続だ。「選ぶことが人生だ」と言ってもいい。

誰と友だちになるのか、どの部活に入るのか、どんな学校に行って何を学ぶのか、卒業してどんな仕事に就くのか……。成長するにつれて、選択の機会と重みはどんどん増していく。

初任給で何を買うのか、いまの会社に留まるか、別の会社に転職するか、それとも独立するか、誰と結婚してどんな家庭を持つか、それとも独身を通して好きなことに没頭するか、住宅ローンを組んでマイホームを持つか、それとも老後まで賃貸暮らしを続けるか……。

選択とは価値判断だ。僕たちはいつも「最も価値がある≒最も得する」と思ったものを選んでいるはずだ(少なくとも理論的には……)。
今日のあなたは、昨日までのあなたが下した価値判断の結果にほかならない。

だとすれば、悔いのない人生を送るために、僕たちにできるのはたった1つ――「値打ち」を正しく見抜くことだ。

「正しい選択」のために生まれた人類の叡智

今回、僕は『あれか、これか』という少々変わったタイトルの本を書いた。この本に書かれているのは、本当の価値を見抜き、正しい選択をするために人類が生み出した究極の実学・ファイナンス理論の考え方である。

これまで僕は、一貫して実務の世界でファイナンス理論を使うかたわら、ビジネススクールのMBAコースで「ファイナンス」科目の講師を10年以上続けてきた。そのため、この分野にあまり人気のある分野だと言えないことは、よくわかっているつもりだ。

本屋さんの棚を眺めていても、戦略やマーケティングの棚のように次々とかっこいい新刊が出たりもしない。おまけに「数字とかお金を扱うややこしいこと」くらいのイメージはみんな持っているので、どちらかというと敬遠されがちになる。

しかも、(残念ながら!)そのファイナンス像はあながち間違ってもいない。
ビジネススクールで教えられるファイナンスは、企業の資金調達・運用などに関わる、かなり実務寄りの知識だ(これをコーポレート・ファイナンスという)。
実際のビジネスでファイナンス理論を使う人は、あまり多くはないだろう。

それにもかかわらず、僕がファイナンスの入門書を書いているのは、これが価値判断、つまり「あれか、これか」の目を養ううえで、有益だと考えているからだ。

ピラミッドかヴェルサイユ宮殿、もらえるならどっち?

さて、ファイナンス理論に関する連載だとわかって、なんとなく嫌になりかけている人のためにも、ここで一風変わったクエスチョンをあげておこう――。

◎どちらかを差し上げます。選んでください。
 (1) ギザのピラミッド
 (2) ヴェルサイユ宮殿

さて、あなたはどちらを選ぶだろう?