「いやいや、そんな無謀なことはしないよ」という人は、もう少し別の例に置き換えて考えてみてほしい。この2つの株が2人の大学受験生だったらどうだろうか?
Aくんは調子がいいと100点をとることもあるが、調子が悪いと40点のときもある。逆に、Bくんはどんなときも、ほぼ70点近辺の成績となる。あなたが教師だった場合、どちらの学生を「優秀だ」と判断するだろうか?ハイリスクを嫌う人も、調子がいいときに100点をとる生徒のほうに軍配を上げたくならないだろうか?
借金はリターンを増やす「調味料」
こうなると、ハイリスク・ハイリターンの法則も怪しくなってくる。本当にこれは法則として成立するのだろうか?さらに迷っていただくために、こんな問題についても考えてみていただきたい。
赤か黒(確率50%)に賭けるルーレットゲームが2種類ある。
1回のプレイ料金はなんと40万円だが、賞金は次のとおり。
ルーレットA 当たり100万円/はずれ0円(期待リターン50万円)
ルーレットB 当たり75万円/はずれ25万円(期待リターン50万円)
あなたはどちらのルーレットで勝負するか?
これもさきほどの株と同じく、期待リターンが等しいが、リスクが異なるという典型的事例である。期待リターンは同じなので、「やはりどちらに賭けても同じ」ということになりかねないが、実はここではルーレットBを選ぶべきである。
その証明は簡単だ。誰かから40万円を借りてきて、ルーレットBに2倍の額(80万円)をベットして遊んでみるとしよう。もしも勝てば賞金は150万円だ。借りてきた40万円を返しても、手元には110万円が残る。だが……もしも負けてしまったら?負けても50万円(=25万円×2)は手に入るのだから、40万円を返済しても10万円は手元に残る。
このように借金(負債)を使うことで、ルーレットBは最高110万、最低10万円のゲームにすることができる。ルーレットAは最高100万円、最低0円のゲームだったから、勝っても負けてもルーレットBのほうが10万円多く入ってくることになる。