ファイナンスについて何も知らない人でも「ハイリスク・ハイリターンの法則」については耳にしたことがあるはずだ。ファイナンスの世界で「より多くのリスク」を取るために登場するのが「負債」だ。MM理論の第2命題である「ハイリスク・ハイリターン」の考え方について、『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから紹介していこう。

「いつも70点」と「たまに100点」
――本当に優秀なのは?

まったくファイナンスを学んだことなどない人でも、「ハイリスク・ハイリターン」という言葉を聞いたことがない人はあまりいないだろう。「挑まなければ得られない(Nothing ventured, nothing gained.)」と言われるように、大きな利益を得ようとするなら、リスクをとらねばならない。これは僕たちの人生にとっても同じことが言えるだろう。

しかし本当にハイリスク・ハイリターンは正しいのだろうか?実を言うと、MM理論の第2命題はハイリスク・ハイリターンの法則を証明してみせたものなのである。

これは「リスクが高ければ、期待(平均)リターンも高くなる」といういたってシンプルな決まりだ。あまりにも有名な法則だが、本当に鵜呑みにしていいのだろうか。

たとえば、ハイリスク株Aとローリスク株Bがあるとしよう。100万円をAに投資すれば最高30%のリターンが望めるが、最悪の場合マイナスもある。Bはリスクは低いが、最高でも15%のリターンしか期待できない。「ハイリスク・ハイリターンの法則」に従えば、Aのほうが期待リターンは高くなければならない。

しかし、もし両者の「期待リターン」がともに同じ10%だったらどうだろうか?つまり、確率論的にはどちらに賭けても期待される収益が等しいのだ。

確率論的な期待リターンが変わらないのであれば、あとは好み次第。「夢を見たい」という人は株式Aを選ぶかもしれない。要するに、期待リターンが同じということは、両者の「実力」は一緒だと考えてもいいのではないかということである。