少子化に歯止めがかからない原因の1つとして、労働市場で非正社員が増加している影響が取り沙汰されている。雇用が不安定で収入が低い非正社員の増加は、若者の未婚化に拍車をかけ、さらなる少子化につながりかねないと言うのだ。しかしそれは、1つの要因に過ぎない。東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授は、最大の原因は「社会構造の変化」にあると説く。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)
――少子化に歯止めがかからない原因の1つとして、労働市場で非正社員が増加している影響が取り沙汰されている。雇用が不安定で収入が低い非正社員の増加は、若者の未婚化に拍車をかけ、さらなる少子化につながりかねないと言われている。実際、非正社員が増えている影響は大きいのだろうか?
日本の30歳代前半層の未婚率を見ると、1970年では男性が11.6%、女性が7.2%に過ぎなかったが、2000年では男性42.9%、女性26.6%、2005年では男性47.1%、女性32.0%と急増している。
未婚率の増加の背景には、確かに雇用機会が不安定で、収入が低水準であることが多い非正社員の増加もあろう。ただし、非正社員だからと言って、結婚が難しいとは、一概に言えない。
日本の非正社員には、一時的に雇用される非正規と、有期ではあるものの中長期的に雇用が継続される「常用非正規」の2種類がある。今増えているのは「常用非正規」のほうで、これが全体の9割を占めている。
経営環境の「不確実性」が増大するなか、企業は中長期的な見通しが立たないと、正社員を雇えなくなった。彼らは、いざというときに雇用調整が難しい正社員の数を、できるだけ絞り込もうとしている。そして人手が足りなくなった分を、常用型の非正社員で補っているのが現状だ。景気の良し悪しとは関係なく、これは継続的なトレンドとなっている。