良い上司との出会いで、成長は加速する

 新年度を迎える4月は何かと慌ただしく、あっという間に終わってしまった気がする。4月に入社した新入社員たちもそろそろ研修が一段落して、いよいよ現場に配属される時期ではないだろうか。

 今年の新入社員は「ドローン型」と呼ばれているそうだ。彼らは、就活スケジュールなどがめまぐるしく変わる中で、希望の内定が取れた人が多かった。そのため、強い風にあおられながらも自律飛行を保って目標地点に着地するドローンになぞらえられたそうだ。

 めまぐるしい変化が避けられそうにない日本の将来の担い手として、しっかりと成長をサポートしていきたいところだ。

 私自身が彼らと同じ立場だったのは、もう20年以上前になる。最初の上司は私の入社後1年もたたずに転職してしまったので、実際は数ヵ月しか直接指導を受けていない。それでも、部下だった短い期間に、とても多くのことを学ばせてもらった。

 この上司との出会いが、自己のポテンシャルやその後の成長のスピードを引き上げてくれたように思う。その時に学ばせてもらったことが、その後20年の私のキャリアのベースになったのは間違いないし、今でも感謝している。

 彼のような、部下を成長させてくれる上司をどうすれば見つけられるのだろうか。また、自分自身が影響力のある上司になるにはどうすればいいのだろうか。世の中にリーダーシップを論じた書物は多いが、「上司」を論じた書物は意外に少ないように思う。

 本書の著者シドニー・フィンケルシュタイン氏は、ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネス、スティーブン・ロス経営学教授で、同スクールのリーダーシップ研究所の所長も務めている。世界中で上級幹部向けにコンサルティングと講演活動をしているほか、能力開発、コーポレートガバナンス、失敗学、成長戦略に力点を置いてエグゼクティブコーチングを行っている人物だ。

 フィンケルシュタイン氏は、ビジネス、スポーツ、ファッション、芸術など、さまざまな業界で一流と呼ばれる人材を育てた「ボス(=上司)」を辿ってみた。すると、どの業界でもたった1人か、せいぜい2~3人の人物に行きつくことを発見した。つまりどのような業界にも、突出した有能な人材を次々に育て上げる少数の「スーパーボス」がいるということだ。