中国共産党が「ネット世論」を意識し始めた理由習政権は、天安門事件などでの「大衆の怖さ」を熟知しているがゆえに、インターネットにおける民意に神経を尖らせている

 2012年に発足した習近平政権は改革を進める姿勢を一貫して示しているが、急激な改革、とくに政治面での改革には慎重で、社会の安定を保つため管理を重視している。習政権の行っている管理ですぐ頭に浮かぶのは「ネット規制」だろう。周知のように、現在中国では一部サイトの閲覧ができず、中国共産党が有害と判断した情報をシャットアウトしている。

 その一方で、習政権は経済発展にインターネットは重要と考えており、昨年の「政府活動報告」に「インターネット+」という言葉を登場させ、「インターネット+製造業」、「インターネット+流通」というようにインターネットを用いての経済の活性化を図っている。 

 4月19日、習総書記は中央サイバーセキュリティー・情報化工作会議で講話を行った。そのポイントは、インターネット事業の発展は人々に幸せをもたらすという点、インターネットの発展環境を整えつつ民意に留意するという点、インターネット関連のコア技術を発展させるという点である。この講話の中で習総書記は、ネット上で人々が述べた意見の中で、建設的なものを取り上げ、政府や指導幹部に対する批判を歓迎すると述べ、インターネットを通じて人々の声を聞く姿勢を示した。 

 この講話の全文は4月26日付けの『人民日報』に掲載され、翌27日にはこの講話の単行本化が報じられた。このことから、習政権がインターネットを経済発展を促す重要産業と位置づけ、人々の声を聞くという手段として重視していることが分かる。

 習政権は異なる言論を封じているイメージが強いが、それはなぜか? また、その一方で、なぜ人々の声を拾おうとしているのか、考えてみたい。

ネットを意識する習政権
背景に「歴史の教訓」

 中国はなぜネット規制を行うか。まずは習総書記のネット規制に関する講話の一部をいくつか見てみたい。

「若者をはじめ多くの人々は、主流メディアを見ておらず、情報の大部分をインターネットで入手している。われわれはこの事実を直視し、さらなる力を投入して、インターネットという世論の戦場の主導権をいち早く握らなければならず、脇に追いやられてはいけない」

「法律に基づいてサイバースペースの管理を強化し、インターネットを確実に管理下において、われわれのサーバースペースを清く正しくする必要がある」

「サイバースペースも現実社会と同じで、自由を唱導しなければならないが、秩序も守らなければならない」