採用も全滅、ビジネスも大幅未達
四面楚歌の果てに…

「原因を究明して、必ず体制を立て直す」。大和部長は、部長会でこう宣言した。確認していくと、プロセスを終了した100人のうち、課長による1次面接で落ちた候補者が実に90人いることがわかった。残りの10人が部長による2次面接に進み、2次面接では計画どおり、50%の5人が役員面接へ進んでいる。

 大和部長は憤りを隠せず、人事部の採用担当者に対して、「いったい、どうなっているのだ、1次面接へ進ませるのは、50%と言っただろう。なぜ、10%しか進ませない」と問うた。採用担当者は、「課長たちが落とすから、しょうがないじゃないですか」という答えであった。「おまえに聞いてもしょうがない」と吐き捨てた大和部長は、1次面接を担当した課長をつかまえると、同様に問うた。

 答えは、「即戦力、10年後を支える人材を2次面接へ送り込みましたよ。後は箸にも棒にもかかりませんでしたよ」という答えであった。「50%2次面接へ送り込まないと、採用目標が達成できないだろう」と重ねて問うと、「採用目標は、人事の目標ですよね。私は厳選採用して役割を果たしましたよ」という答えであった。

 体制を立て直すために、残りの100人について、1次面接で100人から50人へ絞り込み、2次面接で50人から25人へ絞り込むことを、改めて確認しようとした。しかし、残りの100人については、既に1次面接が終了しており、やはり10人しか2次面接へ進んでいなかった。2次面接へ進んでいない候補者を復活させようとしたが、既に合否の連絡を完了していた後だった。

 候補者はさらに100人、人材紹介会社へ割り当てている。残りの候補者の面接合格率を上げることを考え、さらにレベルの高い候補者を送り込むように、やはり直に人材紹介会社へ電話すると、大和部長は、人材紹介会社のコンサルタントに「さらに良い人材が残っていると本気で思っていますか?そういう人材が出てくるのは、3ヵ月から、6ヵ月後ですよ。どこの人材紹介会社も玉切れですよ」とせせら笑われた。

 万策尽きた大和部長は、部長会で、「これまで採用面接の合否は、面接する課長にまかせてきた。残りの候補者については、合否は人事部で行う」と宣言した。すると、「現場を信用しないのか」「面接もしないでどうやって合否を決めるのか」「人事部が合否を決めるのであれば、もう自分の部から面接する課長を出さない。1次面接は全て人事部でやれ」と紛糾し、収拾がつかなくなった。

 それに、業績悪化が追い打ちをかけた。採用プロセスに入って以降、競合他社は軒並み前年比20%程度の伸展をしているにもかかわらず、H社はマイナス20%という真逆の結果に陥った。中核のリーダー、課長、部長が採用面接に従事するがあまり、ビジネスに影響が出たことは自明に思えた。橘社長は大和部長へ、「採用目標も大幅未達、あげくのはてに、ビジネスに取り返しのつかない影響を与えた。いったいどうしてくれるのですか」と、静かな口調で語りかけたが、大和部長は何も答えられなかった。