本当は実力よりも学歴重視?
人気企業の新卒採用基準
今回は、あるメジャーなベンチャー企業でマネジャーを務める人物に「新卒採用」について学歴という切り口で取材を試みた。
この会社は、現在の正社員数が1000人近い。マネジャーには7~10年ほど前に正社員が100~300人だった時期のことを集中的に尋ねた。この時期から、日本のベンチャー企業の多くが「学歴」を意識した新卒採用を本格化させるからだ。2000年代にベンチャーで「学歴病」が浸透し始めた、初期のステージと言える。
聞き取りの対象は、営業本部マネジャーの男性A氏。創業期から正社員数が100~300人になるまでの時期に、新卒の面接試験などに関わっていた。彼の話を聞くと夢や希望がなくなるかもしれないが、「学歴主義ではなく実力主義」というイメージも手伝って学生に人気の高いベンチャー企業にも、「学歴主義」の考え方が根付いていることがわかる。同社に学歴病が根付いて行くプロセスを知ることで、「採用における学歴とは何か」を考えるための参考にしてほしい。今回はA氏へのインタビュー形式でお伝えする。
始めにA氏のプロフィールをお伝えしておく。彼は39歳で、1990年代後半に創業したITソフトウェアのベンチャー企業(正社員数は約900人、関連会社を含めると2300人)で営業本部マネジャーを務める。部下は40人前後。最終学歴は高卒。20代前半のとき、中途採用で入社(2000年)した。
――現在、社員の8~9割は大卒のようですが、Aさんは高卒でありながら活躍されていますね。
A氏 私は、学歴による区別や差別で悩んだことがありません。今の会社に入ったのが、2000年。その頃、正社員数は15~20人ほど。まさに、どベンチャーの頃です。大卒が2人、専門学校と高卒が私を入れて数人。全員が、中途採用組。職場で学歴の話題になったことすらないのです。
――会社が新卒の採用に踏み切った経緯は何ですか。
A氏 2003~07年に、新卒採用を本格的にスタートさせました。社員数が50~70人に増えていた頃です。社長(現グル―プのCEO)の強い意向です。中途採用者は辞めていくケースが多く、離職率が高いままだったのです。確かに新卒を雇うと、定着率は確実に上がりました。
私の経験で言えば、正社員数が50~100人ほどになったら、学歴を意識した採用をしたほうがいい。150~200人になってからでは、タイミングが遅い。今も中途採用は行っています。新卒、中途の双方の採用を継続していくのが、業績を急上昇させるためのベンチャーの鉄則の1つだと思います。