コンビニエンスストア業界で長らく2位だったローソンが、ファミリーマートの統合により3位に転落する。本業も伸び悩みを見せる中、「質」への投資による巻き返しを狙うが、大きな課題も横たわる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)
「おにぎりは5個追加発注することがお勧めです」。タブレットが教えてくれるのは、最適な商品の発注量。レジには顧客がワンタッチで商品を注文できるタッチパネルが備えられ、外には配達用のドローンが浮かぶ。
4月1日、東京都港区のホテルで開催されたローソンの入社式。冒頭で披露されたのは、ローソンが思い描く2020年のコンビニエンスストアの姿だった。
「これから3年で、ローソンは大きく変わろうとしている。もっと商売の『質』を上げていく」
玉塚元一社長は約170人の新入社員に対して熱弁を振るい、「今後生き残るのは生産性の高いチェーン。さらなる成長へチャレンジしよう」と呼び掛けた。
質を高める──。玉塚社長の口からこの言葉が目立つようになったのは14年春ごろから。ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスの経営統合が明らかになった時期と重なる。
この統合により、ファミマはセブン-イレブン・ジャパンと並ぶ1万8000店規模にまで拡大、ローソンは6000店近い差をつけられて業界3番手に落ちる。そのため、質へのこだわりをアピールしているのだが、肝心の本業の業績が芳しくない。
15年度の決算は、営業利益が前年度と比べ21億円増の725億円で、過去最高益を更新した(図(1))。問題はその中身だ。
営業利益を押し上げたのは、14年に買収した高級スーパーの成城石井と、映画館事業を展開するユナイテッド・シネマの貢献が大きい。それぞれ57億円、23億円の営業利益を稼ぎ出し、2社だけで前年度比63億円の増益要因となっている。
片や、本業のローソン単体の営業利益は前年度比37億円減の572億円と、2期連続の減益に陥っている。「もともと15年度は減益予定だった」と語る吉武豊・最高財務責任者(CFO)が挙げる減益要因は大きく二つある。
一つ目は広告費の増大だ。昨年40周年を迎えたローソンはテレビCMを中心に積極的に宣伝を行った。その効果もあって、客数が増え、既存店売上高伸び率はプラスに転じたものの(図(2))、単体の広告費は147億円と前年度から64億円も増えた。
二つ目は、加盟店オーナーとのフランチャイズ(FC)契約の切り替えに伴う販売管理費の増大だ。