「返済中に病気になったら心配ですよね?」
このひと言で大半が付ける保険
住宅ローンの金利引き下げ競争は、限界まできているため、最近はどこの銀行も「病気を保障するローン」で独自性を出そうとしている。「がん、心筋梗塞、脳卒中になったら住宅ローンはゼロ」、「8つの重大疾病も保障する住宅ローン」などといったキャッチコピーを目にした人も多いだろう。
私のところへ住宅ローン相談に来る人からも「保険で選ぶなら、どの銀行がお勧めですか」と聞かれることが増えている。「疾病保障保険」は、住宅ローンに付帯する任意のオプション。各行の独自商品であるため、仕組みや商品性はそれぞれ異なり、利用者が比較検討するのは簡単ではない。
そもそも保険料というコストをかけてまで付けるべきなのか、付帯するなら選択のポイントはどこにあるのかを整理しよう。
銀行は、住宅ローンの契約者が返済中に死亡した場合のリスクを「団体信用生命保険(団信)」でカバーする。銀行ローンの場合、団信の加入はマストで、保険料は金利に含まれているため、契約者が別途支払う必要はない(フラット35は任意加入、保険料は別途支払う)。
一方「疾病保障保険」は、契約者が病気でローン返済が困難になったときをカバーするもの。保険料は原則として契約者が負担する。種類はいろいろだが、「がん保障タイプ」、がんに加え脳卒中、急性心筋梗塞が対象の「3大疾病タイプ」、糖尿病や慢性腎不全などを加えた「7~8大疾病タイプ」に大別される。
保障する病気が増えるほど、保険料は高くなる。銀行にもよるが「がん保障タイプ」だと無料~金利+0.2%、「3大疾病タイプ」は金利+0.3%、「7~8大疾病タイプ」は+0.3~0.4%の水準だ。
銀行の担当者から「住宅ローンの返済中に病気になったら心配ですよね」のひと言で疾病保障保険を付ける人は多いようだが、果たして保険料に見合う保障と安心は得られるのだろうか。金利+0.3%前後の保険料は、決して安いとはいえない。
保険料は30年間で170万円!
たとえば、3000万円を金利2.5%、30年返済で借りるケースなら、0.3%の疾病保障保険を付帯すると、保険料は170万円にもなる。しかも、保険料が上乗せされた金利が契約書上の金利になるため、オプションの保険とはいえ、途中解約することはできない。