●集中しやすい
●ポイントがわかるので、再読のスピードが上がる
●読みながら編集、リデザインすることになる
●本はテキストが入っているノートである

 川添登と同様、本はノートである、と断言する。おことわりしておくが、何度も言うように、書き入れることができるのは自分の本だけで、図書館や知人から借りた本に書いてはいけません。

本への書き入れを重視した夏目漱石

 もっとさかのぼって読書人の技術を学んでいこう。

田中菊雄『現代読書法』(講談社学術文庫、1987年)

 田中菊雄(英語学者1893-1975)が戦前に読書術をまとめ、多くの読者を得ていた、という事実を紀田順一郎(書誌学者・評論家1935-)に聞いたことがある。紀田は著書『生涯を賭けた一冊』(新潮社、1982)で田中菊雄の『現代読書法』(柁谷書院、1942年、講談社学術文庫、1987年)を取り上げている。

 田中菊雄については、名前はよく知っていた。『岩波英和辞典』の著者だからである。電子辞書を常用し始めた2000年前後まで、ひんぱんに使っていた辞典だ。現在はまったく開かなくなってしまったが、あらためて奥付を確認してみた。

島村盛助、土居光知、田中菊雄『岩波英和辞典新版』(総皮装特製)1000円
1936年4月14日第1刷発行
1951年5月10日新増訂版第1刷発行
1958年3月25日新版第1版第1刷発行
1972年9月1日新装第1版第16刷発行

 1972年、私は高校3年生だったから、おそらく卒業後に買ったのだろう。ハンディでありながら語源までおさえている辞書で、もう40年以上、自宅の書架にある。だいぶ前に絶版になっているようだ。3人の共著だが、序文を田中が書いているので、彼が中心的な著者だとはだれにでもわかる。

 紀田順一郎によると、田中菊雄は北海道小樽市で生まれ、貧困の中で育ち、高等小学校を途中でやめて働いている。働きながら独学で英語を学び、幅広い本を読み、資格試験を突破して旧制中学、そして旧制高等学校の教授にまでなった人だ。戦後は山形大学教授、神奈川大学教授をつとめている。したがって田中の読書法とは、すなわち独学の技術でもある。私は講談社学術文庫版の『現代読書法』を読んだ。

 田中菊雄もまた、本にたくさん書き込む読書人だった。

「宝の山へ入って手を空しうして帰ることのないやうにするためには是非共何等かの方法を講じなければならぬ。私共は読書に際しては必ず鉛筆(なるべく色鉛筆)又は万年筆を用意しなければならぬ」(田中菊雄、前掲書)。

「ならぬ」と断言している。ただし、図書館の本に書き込むことはできないので、別に「抄録」を作っていたそうだ。

「図書館の書物とか人から借用した書物については抄録を用ひ、自分の蔵書に対してはこの書き込み法を用ひるのが最も便であると思ふ」(田中菊雄、前掲書)。

 現在ならば「抄録」もいらない。必要箇所をコピーし、コピーに書き込めばいい。