アップルがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)へ進出した。
先週、サンフランシスコのアップル・イベントで明らかにされた、同社のSNS「Ping(ピング)」は、今回の発表の中でも意表をついたものだった。ピングは、アップルCEOの言葉を借りれば、「フェイスブックとツイッターにiTunesを掛け合わせたようなもの」。
iTunesはアップルの音楽を中心としたマルチメディアコンテンツのオーガナイザー兼プレーヤー兼ストアの入り口で、ピングは音楽を核としたSNSとなる。これを通じて、まだ知らない曲のディスカバリー(発見)に役立てようとアップルは売り込んでいるのだ。
ピングは、他人が買った楽曲やコメントを見ることができるサイトで、フェイスブックのようにクローズにもでき、ツイッターのようにオープンにもできる。仲間内で、どんな曲をダウンロードしたといったようなアップデートがわかるようにできる一方で、誰にフォローされたり、誰をフォローしたりも自由という設定もできる。
直接には相手を知らないが、音楽の趣味に一家言ある人の購買歴などをフォローするのは面白いだろう。ミュージシャンもここにコンサートやアルバムの新情報を掲載して、プロモーションに役立てることもできるし、ファンはミュージシャンのお気に入りの音楽や、日々のつぶやきを知ることもできるという、うれしいサイトだ。
だが、アップルにとって、音楽のSNSは遅すぎた進出とも言える。iTunesストアの出現は音楽業界を不意打ちしたが、2003年の開始から7年がたった現在、すでにデジタル音楽売り上げの80%を担う大店舗に拡大した。アップルの発表によると、iTunesのユーザー数は1億6000万人。すでに音楽好きが大勢たむろしているのだ。もっと以前にSNSは可能だったはずだ。だが、その潜在力のおかげだろう。ピングの発表後たった48時間で、登録者が何と100万人を超えたという。