個人へのインセンティブの具体的な内容は、健康診断の受診、健康教室への参加のほか、スポーツジムに通ったり、禁煙をしたりして、病気予防や健康づくりにつながる行動をしている人には、貯まったヘルスケアポイントに応じて特典を与えるといったものだ。

 特典は、体重計などの健康グッズ、健康食品、商品券、保養所の利用券などが多い。なかには医療費を使わなかった人に、現金を給付している健康保険組合もある。

 今回、厚生労働省が発表したガイドラインで「慎重に考えることが必要」と注文をつけられたもののひとつが、この「現金給付による健康づくり」だ。

 たとえば、ある自治体の国民健康保険では、メタボ健診を受け、1年間医療費を使わなかった世帯に、奨励金として1万円を給付している。

 だが、医療費を使わなかった人に、健康保険の財源から現金を給付するということは、実質的な保険料の引き下げにあたる。別の視点から見ると、医療費を使った人の保険料を引き上げることになり、病気で治療している人に対してペナルティーを与えることになってしまう。

 このように疾病リスクによって保険料に差をつけることを許すと、病気の有無や所得額にかかわらず「いつでも、どこでも、だれでも」平等に医療を受けられてきた国民皆保険が崩れていきかねないのだ。

 その理由は、民間保険の保険料体系と比べると分かりやすい。

インセンティブの先にある
アメリカ型の階層消費医療

 民間の保険は、年齢や性別ごとに全体では、「このくらいの確率で病気やケガをする」という過去のデータをもとに保険料を決めている。病気になる人ばかりが加入すると、約束していた保険金や給付金が払えなくなったり、予定していた利益をあげられなくなったりする可能性もある。

 そこで、保険会社は、加入希望者の健康状態を調べて、持病のある人や病気になる確率の高い人は、最初から排除するようにしている。

 事前に医師の診査や、健康状態を知らせる告知書の提出を求められるのは加入者を選別するためで、原則的に持病のある人は加入できない。