新工場は稼働を10月に延期
技術力で負ければ即退場する
本間 充(ジャパンディスプレイ会長)インタビュー
昨夏に会長に就任したが、私がこれまで携わってきた電池分野と違い、あまりにも歩留まりや稼働率の低いことに目を疑った。「これが液晶の常識です」と部下に言われたときには、その非常識さに怒りを覚えた。
生産ラインの名称を、あえて責任者の名前で「○○ライン」と呼ぶようにして、コスト削減の意識を徹底させるなど、就任以来、事業の足元を固めることに腐心してきた。
3月に茂原と東浦工場の一部ラインを止めることを決めたのも、見込み生産などで余分な在庫を持たないよう調整した結果、稼働率が著しく低くなり、全体の足を引っ張る状況が続いたためだ。工場の稼働率を優先させるような運営はもうしない。
石川県白山市の新工場は5月の稼働開始を考えていたが、足元の事業環境の悪化を踏まえて、10月以降に延期する。シャープとの統合はなくなったが、われわれの技術は最高水準にあるという自負がある。ディスプレイは技術が全て。技術でもし負けたら退場するしかない。(談)
液晶産業の競争力強化に
シャープの技術が必要だった
谷山浩一郎(産業革新機構執行役員)インタビュー
ジャパンディスプレイ(JDI)のLTPSの技術と、シャープのIGZOの技術を組み合わせることで、ディスプレイの進化のスピードを上げる。それが出資提案した目的の一つだった。さらに、日本は液晶ディスプレイ発祥の地で、部材のサプライヤーをはじめ裾野が広く、産業としてのバリューチェーン(付加価値の連鎖)に大きな強みがある。
日本という国は価格競争になると必ず負ける。個社が連携して、産業全体としての付加価値を最大化し競争力を高めることは不可欠で、そのためにもまずはJDIとシャープの統合が必要だと考えていた。
ホンハイは、有機ELに2000億円投資と言っているが、業績悪化の元凶となったディスプレイ事業に、再び巨額の投資をすることに、他部門の社員たちは一体どういう思いなのか。銀行が優先株の引き受けで注入した2000億円が1年で吹き飛ぶような状況では、まず有利子負債の削減をしないと、財務に不安を抱えたままになる。(談)