産業革新機構が主導し、ソニー、東芝、日立製作所の液晶部門が統合して誕生した、ジャパンディスプレイ。シャープとの事業統合なき今、日の丸液晶はどう生き残りを図っていくのか。
今年1月末。ジャパンディスプレイ(JDI)の本間充会長は、事業部から上がってきた2016年1~3月期の売り上げ見通しに頭を抱えていた。
中国・アジア向けのスマートフォンメーカーへの液晶パネルの売り上げが、想定より3割近くも下回る見込みだったからだ。
米アップル向けの売上高が4割を超える同社にとって、過度の収益依存を避けるためにも、中国市場での顧客囲い込みは喫緊の課題だった。
しかし、JDIは昨春、新型iPhoneなどの生産対応に追われるあまり、華為技術(ファーウェイ)をはじめ、販売台数を急速に伸ばす中国メーカーからの受注を一部断っていた。
袖にされた中国メーカーが、韓国サムスンディスプレイの有機ELパネルなどに流れていったことで、その影響が15年秋以降、急速な受注減のかたちでJDIを襲うことになった。
それでも、タッチパネルの内蔵(インセル)技術を武器に、中小型液晶で22%のトップシェアを持つ同社は、16年1~3月期は十分に挽回可能と踏んでいた。
しかし、袖にしたことの代償は想像以上に大きく、そこに中国の景気減速によるスマホ在庫の拡大が追い打ちをかけたわけだ。
関係者によると、中国メーカー向けの液晶パネルなどを生産していた3.5世代の東浦工場(愛知県東浦町)は、年明け以降、稼働率が30~40%前後まで落ち込んでいたという。
昨秋発売されたiPhone 6sの販売低迷で、石川県能美市など他の工場の稼働率も落ち込む中、JDIは3月、東浦と4.5世代の茂原工場の生産ラインの廃止を決定した(下図参照)。