離脱派が勝った場合、英国が欧州理事会にEU離脱の意志表明をしてから離脱の最終合意に至る期間は2年とされている。離脱手続きはリスボン条約第50条に基づいて行われるが、一度告知した後の撤回はできない。

 まず問題は英国内にある。残留を主張するキャメロン首相は、離脱派が勝っても辞任しないと表明しているが、果たして英国を代表して離脱交渉に当たれるのか。その場合、どのような条件を優先するのか。

 離脱に際しては、EUとの間で貿易協定を結び直さなくてはならないが、その場合は、既存の枠組みを使うケースと二国間協定を結び直すという二つの方法が考えられる。例えば、前者ならノルウェーなどで構成されるEFTA(欧州自由貿易連合)に加盟する。EFTAはEUとの間でEEA(欧州経済領域)という自由貿易協定を結んでいるため、二国間で協定を結ぶ必要はなくなる。だが、EEAは人の自由移動を認めているため、移民の制限は難しい。英国の意志を優先するとなると、二国間協定を結び直すことになるが、膨大な時間がかることが予想され、その間、英国とEU経済に何が起こるか見通せない。

 そもそも離脱派が勝った場合、英国では総選挙実施の可能性も取りざたされている。総選挙で残留派の労働党が勝った場合は、政権を決める総選挙と国民投票の結果が異なるという複雑な事態が起きないとも限らない。

 日本総研調査部の藤山光雄副主任研究員は「貿易を通じた直接的な影響は、懸念されているほど大きくはない。むしろ金融市場の混乱による影響が大きい」と見る。要は、不確実性の高まりを受けて、資金がリスクの高い資産から引き上げられるリスクオフが起こる場合である。

 その場合は、ポンド安・ユーロ安、株安が起こり、その結果、海外の投資家は損失が発生するのを避けるためシティへの資金流入が減り、マイナス金利で収益力の低下したEUの銀行セクターの経営不安が再燃するかもしれない。リスクオフだから原油市場から資金が引きあげられ、ようやく安定した原油価格が再び下落することになるだろう。そうなれば新興国経済もダメージを受ける。安全資産としての円は買われて円高となり、日本経済にも悪影響が及ぶ。こうなれば金融市場の一時的な動揺にとどまらず、世界経済の後退を招く。

 それだけではない、国民投票直後の6月26日にはスペインの総選挙、来年4月から6月にかけてはフランスの大統領選挙、秋にはドイツの総選挙がある。たとえ残留派が勝っても結果が僅差なら、こうした国々の反EUを掲げる極右、極左政党を勢いづかせる可能性がある。そうなれば、EUの政治が不安定さを増す。

 残留派のコックス議員が射殺され、自粛されていた両派のキャンペーンも再開されたが、「キャメロン首相の議論はあまり説得的でない」(クレイグ氏)という。世紀の選挙は23日、結果は24日の午前4時ごろ(日本時間の正午ごろ)、判明する予定である。