

では、いったい日本企業は何をしていたのかというと、常に海外の後追いをしていた、という印象があります。
これまでも今も、日本の企業はすでに世にある概念やサービスの「日本版」を作ることに一生懸命。例えば、クラウドでAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)が浸透してくると、「ならばもっと優れた日本版AWSを作ろう」という発想になりがちです。しかし、すでに製品化された分野に力を注いでも、いずれ価格はどんどん安くなり、消耗戦を強いられることになります。ワンテンポ遅れたモグラたたきに勝ち目はありません。
それは、この連載でも以前に書いた「ムーアの法則」からも明らかです。ムーアの法則とは「半導体の性能は18~24ヵ月で2倍になり、価格は半分になる」というもの。つまり、技術力がいかに優れていても、製品単体の値段がどんどん安くなる流れは止められないため、それだけではいずれ厳しい状況に追い込まれてしまう可能性が高いというわけです。
もし、あなたがエンジニアで素晴らしい技術を生み出したとしても、それを越えるものが次々と生まれ、価値は下がってしまうのです。どんな天才でも「ムーアの法則」には逆らえないでしょう。
現状でいえば、例えばクラウドがあり、それを活用したビッグデータが生まれ、そのビッグデータを活用したAI(人工知能)がさまざまな分野で注目されています。だからといって、今からAIビジネスに乗り出していこう、なんていうのは遅すぎる。
そうではなく、「AIは今後もっと普及するだろうから、それを前提としたビジネスを創り出そう」という発想が必要。10年先の世の中は、手術も介護も育児も教育もロボットが主役になっているかもしれない。つまり、AIが普及した世の中を想像して、どこにビジネスチャンスがあるのかを考えるクリエイティビティが求められるんですね。
他社と同じステップを踏んでいたら勝てるわけがありません。スキップして先を行くことが必要なのです。