中国では目下、過剰生産能力の解消が政策として進められている。

 この方針は、新常態下の中国が進めている「五つの任務(過剰生産能力の解消、過剰債務の縮減、過剰在庫の消化、コストの引き下げ、脆弱部分の補強)」の一つであり、中国の製造業の高度化、高次元での競争を促すうえでも重要である。また、今年2月の国務院6号文件では、5年間で1億~1億5000万トンの過剰生産能力を削減する目標が明記された。

 今年3月に開かれた全人代で、李克強首相は「政府活動報告」の中で、「この3年で、製鋼・製鉄9000万トン以上、セメント製造2億3000万トン」などの旧式生産能力を廃棄したと、これまでの成果を強調し、「生産能力の新規拡大を厳しく抑え、旧式生産能力を断固廃棄し、過剰生産能力を秩序立てて解消する」という意気込みを語った。

 だが、過剰生産能力解消「元年」となるべき今年は、必ずしも政府の方針のように生産能力減少に向かっているとは言い難い。

 新華社の報道によると、中国の5月の粗鋼生産量は、前年同月比1.4%増、前月比1.5%増の7050万トンとなった。3~4月の粗鋼生産量は増加傾向にあり、3月は7065万トン、4月は「清明節」の連休もあって前月よりも3日間営業日が少なかったことも影響してか6942万トンとやや減少したが、同月の1日当たり粗鋼生産量は231万4000トンに上り、2014年6月の記録した過去最高の生産高を上回った。5月の1日当たり生産量は227万4000トンで先月よりもやや減少したが、依然として高い水準にあり、「供給側改革」の難しさを物語っている。

「過剰生産能力の解消」が強力に推し進められているにもかかわらず、なぜ生産量が増えるのだろうか。