いずれにしてもEU離脱を決めた英国だが、スコットランドにおける独立機運の高まりなど「グレートブリテン」分裂への動きやEUとの今後の交渉の行方など、不透明な部分が多い。それだけに日本にとって、世界的な株安や円高がいつまで続くのかは気がかりだ。

 特に円高の進行には歯止めがかかるのかどうか。2008年9月のリーマンショックでは、円相場が90円台から80円台へと二ケタ台に突入し、2012年からは一時76円となる超円高時代が続いた。2009年3月期決算ではトヨタ、日産以下6社が営業赤字に転落するという事態となった。トヨタは初の、日産は14年ぶりの営業赤字転落だった。日本車各社にとって苦く、苦しい経験だった。さしものゴーン日産社長も、「日本には欧米市場にない『円高』というマイナス要因がある」と弁明していたのが印象的だった。

 2013年以降、為替相場は100円台から110~120円の円安に触れて安定化したが、今年に入って年初来の株安と円高トレンドに戻りつつあった矢先に起きた英国のEU離脱である。トヨタをはじめ日本車各社は1ドル=105円程度の想定で今期の業績見通しを打ち出していた。トヨタでは1円の円高によって約400億円の為替差損が発生することから、6月28日の東京株式市場でトヨタ株は約3年3ヵ月ぶりに5000円割れの安値となった。為替相場で英離脱を受けて円高が進み、17年3月期の業績計画が未達になるとの懸念が広がったためである。

増税延期で駆け込み需要消失、
海外戦略の見直しという内憂外患

 英国のEU離脱によって世界経済の先行きに不透明感が高まり、トヨタに限らず世界的に自動車株は下落傾向にある。日産にいたっては29日段階で930円と、低迷している。日本国内においても、安倍首相の消費増税の再延期以上に、英国EU離脱の影響が国内景気の押し下げ要因になるのではないかと懸念される。

 日本国内の新車市場見通しは、消費増税延期で想定されていた駆け込み需要がなくなること、三菱自工やスズキの燃費データ不祥事で軽自動車の落ち込みが続くことなどの影響で、年間500万台を大きく割り込むことになりそうだ。景気動向に敏感な自動車は、国内で低迷する一方、輸出でも厳しく、海外生産でも戦略見直しを余儀なくされるという「内憂外患」にある。

 その意味では、日本車にとって欧州戦略の足がかりとして築いてきた、あるいはグローバル生産基地に高めようとしてきた英国生産についても、輸出で高関税がかかるようになれば元の木阿弥となる。とはいえ、ドーバー海峡を渡って欧州大陸での生産に切り替えることは、金融分野と違いそう安易ではないという現実もある。

 まさに日本車にとって、英国EU離脱の影響は悩ましい限りなのだ。早期にこの不透明感が払拭される流れを、自動車業界こそが強く期待しているのである。