上海には2つの空港がある。上海市内を流れる黄浦江の東側にある浦東国際空港と旧市街地の西郊にある虹橋国際空港だ。さしずめ東京の成田国際空港と羽田国際空港のようなものである。

 浦東国際空港が出来てから、国内便専門になった虹橋空港は結局、市内や近隣の蘇州、無錫などの江蘇省都市群とのアクセスの良さが評価され、根強い要望によって、不死鳥のように再び国際空港としての地位を固めた。

 今年の春、この虹橋空港の地位をさらに高める出来事があった。虹橋交通センターが産声をあげたのだ。虹橋空港の新空港ターミナルビル(第2ターミナル)が営業を始め、地下鉄が開通し、中国版新幹線の高速鉄道の発着する駅もでき、蘇州・無錫・昆山・常熟・張家港・杭州などの地方都市を結ぶバスの拠点ともなるすごい交通中枢である。これまでの中国の交通インフラになかった発想の結晶と表現してもおかしくない。だから、中国のマスコミは、「新虹橋時代の訪れ」という表現でその存在の意味を強調している。

 今回の中国出張では、乗り換えの利便性とスケジュールの都合で虹橋交通センターを利用することにした。メディアの報道などでその接続の便利さを知ってはいたが、胸の中にはやはり一抹の不安があった。

 JALの国際便を降り、出迎えに来た関係者に虹橋駅への移動方法を確かめると、案の上“難関”に出くわした。本来は空港のターミナル間をつなぐ無料の連絡バスを利用すればいいのだが、荷物の多い私を見て、関係者は頭を振った。バスを降りてから駅まではかなり歩くという。それではタクシーで行こうと思ったら、それもどうも無理なようだ。タクシーの運転手から見れば移動距離が短すぎるために嫌がられる。結局、何とか私的な関係を通じて車を確保し、移動することにした。

 無事、高速鉄道が発着する虹橋駅に着くと、まず荷物を運ぶカートがない。四苦八苦しながら荷物を持ち移動するが、乗車券などを販売する窓口が見当たらない。厳密に言えば、実際に乗車券などを販売している窓口が見つからなかった。販売窓口と表示されている窓口はあちらこちらにあるものの、どの窓口にも当直している駅員がいない。しかも案内所のような施設も見当たらなかった。