同構想実現会議の提言でも、「これまで日本の精神保健医療対策が遅れてきたために、40万人から300万人とまでいわれている“引きこもり”が発生し、社会の重大問題になっている。重症化して、入院するまで放置される今のあり方を早急に改めなければ、多くの若者の人生が損なわれ、国の損失は膨らむばかりだ」などと訴えている。

 話を戻すと、英国の場合、2026年の「精神疾患による経済損失額」は、14.2兆円にまで膨れ上がるだろうと報告されているので、日本の損失額も実質的には、30兆円近くにまで達するのではないかというのだ。

他の先進国が精神疾患対策に乗り出す一方、
日本政府はその重要性を認識していない

 その後、英国は薬物療法に抵抗感のある国民の受診率を上げるために、心理療法を普及させるなどの精神保健医療改革を実施。人口10万人当たりの自殺者数を10年間に15%減少させるなど、自殺対策に大きな効果を上げてきたという。

「英国では、このような推計に基づいて、3大疾患の1つである精神疾患対策を国家の優先課題として位置付け、取り組んでいます。先進国の多くが直面する少子高齢化社会では、認知症の増加や若年労働人口の健康被害の最大の要因が精神疾患です。先進各国では、精神疾患対策が少子高齢化対策の要として取り組まれてきました。しかし、世界に類を見ない少子高齢社会に向かう日本では、精神疾患対策の重要性を政府が十分認識していないのです」

 そう説明する西田氏は、日本の場合、医療費などの“直接コスト”しか考慮されていないという。つまり、いいサービスを行えば、健康が回復して元気になり、税金が納められて、生活保護費用の減少も図れる。そうした重要な“間接コスト”を政策上重視してこなかったのではないか。

「現実には、膨大に生じる“間接コスト”が、大きく国にのしかかっています。個別のテーマごとに非効率だったバラバラの対策をまめて取り組むことができれば、引きこもりも自殺も減らせるはずです」

 精神疾患は、働こうとする人たちの能力を阻害している要因の1つだ。ただでさえ、本来の働き盛りの人たちが、精神疾患によって大きな損害を生じている。このままでは、超少子高齢化社会を支えることができなくなる。まさに、「待ったなし」の状況であることは言うまでもない。