「戦略」と「ノリ」
「逆転」に必要な二つの柱

 リーマンショックから2年が経過したが、日本経済の閉塞感は相変わらずだ。企業の業績に薄日がさしても、将来に対する不安心理が拭えず、おっかなびっくり試運転をしている状況が続いている。

 あれだけの急激、かつ大きな落ち込みを経験したのだから、憶病、慎重になるのはやむを得ない面もあるが、過度な慎重さは企業の持つ潜在的なエネルギーを閉じ込めてしまうことも否定できない。

「失われた15年」の間に、日本企業を取り巻く競争環境は劇的に変化した。韓国や台湾、さらには中国、インドという新興国の企業が着実に力をつけ、分野によっては日本企業を凌駕するほどの勢いで、世界を舞台に躍進している。技術や品質、さらにはブランドにおいても、彼らの成長は目覚ましい。少なくとも、「勢い」という側面では、日本企業は大きく後塵を拝している。

 今、日本企業が持たなければならないのは、「守り」ではなく、「攻め」の姿勢である。欧米企業だけでなく、新興国の巨大企業に対しても、「このままではおかない。かならず“逆転”するぞ!」という挑戦者の気概で挑まなくてはならない。

「逆転」を実現するためには、二つの柱が不可欠である。ひとつは「戦略」である。戦略はすべての戦いにおいて必要であるが、「逆転」を目指すという局面で、最も必要とされる。

「ゲームのルール」を読み解き、彼我の強み、弱みを把握した上で、合理的で身の丈に合った「逆転のシナリオ」を描く。多くの日本企業は今、冷静、かつ客観的に「リーマン以後の戦略」を練りつつある。その点について、私はあまり心配をしていない。

 しかし、戦略だけで「逆転」を実現するのは困難である。二つ目の柱として欠かせないのが、「ノリ」である。ここでいう「ノリ」とは、「調子に乗る」などで使われる「ノリ」のことである。