かつては消費者金融トップを誇った武富士が、もがき苦しんだすえに9月28日、会社更生法の適用を申請した。今後は再建を目指すことになるが、スポンサー選びが難航して破産手続きへと移行する可能性もある。一方で、破綻の余波は同業他社へと広がる可能性があり、予断を許さない状況が続く。

苦しんだすえの会社更生法<br />なおリスク残る武富士の行方Photo by:Toshiaki Usami

 9月21日のことだった。消費者金融の武富士は、密かに日系の投資ファンドに対し、ある債権を売却していた。

 その中身は、一部、条件変更をしているものの、いまだ返済が続いている貸出債権。新規の貸し出しは極力絞り、回収で食いつないでいた武富士にとってみれば、まさにメシのタネだった。売却価格はわずか10億円程度。簿価が66億円だったにもかかわらずだ。

 武富士は、これより前の昨年末あたりから、なりふり構わぬ資産売却に明け暮れてきた。不良債権はもちろん、本社を除く保有不動産のほぼすべてを売却する方針を固め交渉を続けた。だが、思うように売却は進まず、たどり着いたのが貸出債権だった。

 とはいえ、毎月の過払い利息返還が100億円程度で高止まりしている状況では、10億円が手に入ったとしても焼け石に水。結局、それからちょうど1週間後の28日、力尽きて会社更生法の適用を申請した。

「過払い利息の返還が思った以上に高止まりした。このままだと(事業の)再構築が無理な状況になることが見えており、判断した」

苦しんだすえの会社更生法<br />なおリスク残る武富士の行方会社更生法適用を申請した武富士の吉田純一社長。 最大で200万人強の債権者に迷惑をかけることになる
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 28日夜、急きょ取締役から社長に抜てきされた吉田純一氏の言葉にも表れているように、武富士にとどめを刺したのは過払い利息返還請求だった。

 業界トップをひた走ってきた武富士だが、好業績を支えてきたのは、業界随一ともいわれる強引な貸し込みと、厳しい取り立てだった。そのぶん、過払い利息返還請求もずば抜けて多く、損失は毎年1000億円以上。資金繰りに窮するのは時間の問題だった。

 今後は、再建に向けて動き出すことになるが、武富士の契約者は負担を強いられる。過払い利息を受け取る権利を持っている契約者は、「最大で200万人強、過払い利息返還金は2兆円を超える」(申し立て代理人弁護士)という。

 武富士はこれに見合う資産を持っておらず当然、カットされる。あるアナリストは「武富士のカット率は70%前後では」と予想する。つまり武富士は、契約者の犠牲の下で再生を図るというわけだ。

 同業他社も余波を警戒している。過払い利息を受け取る権利を持つ契約者は、武富士に対して届け出を出さなければその権利を永久に失う。どうせ返還請求をするのなら、「同業他社にも請求しよう」という契約者が出てきかねない。