最近の中国の動きから、その原因として次の三つが考えられる。

 一つは、習政権は現在内外ともに課題が多く、日中関係をこれ以上悪化させるのではなく現状維持にするという判断がはたらいているのではないか考えられる。二つは、現在のところ安倍政権に代わる政権が生まれる可能性が低いため、同政権と長期的スパンで付き合っていく必要があると習政権が考えているためである。三つは、習政権は毛沢東の「二分論」に基づいて、日本軍国主義者と広大な日本人民を区別して民間交流を続けていくことを基本方針としているためである。

 毛沢東の「二分論」は「戦争と革命の時代」という時代背景、闘争性を持つ毛沢東路線が生み出したものであった。1950~60年代の中国は、アメリカ帝国主義を「主要な敵」としており、アメリカの軍事基地のある日本の広範な人民の、アメリカ帝国主義とその代弁者である日本反動政権に反対する闘争に期待しており、日中両国の人民が連帯して日本革命を実現するというのが毛沢東の考えであった。

 ただ、現在は毛時代のような「戦争と革命の時代」ではなく「平和と発展の時代」であり、中国共産党の外交のスタンスも経済建設にプラスになる対外関係に変わっている。だが、日本については、歴史問題など「原則問題」があり、ひとたびそれに関する意見の対立があれば、両国の関係が冷却化する恐れもあるので、両国関係の「二分論」は現在も有効なのである。

 現在、日中関係は最悪とはいえないが、先ほども述べたようにまだ「脆弱」である。今後、両国は「共通の利益」を見出だす必要があろう。これは中国の日本研究者も指摘している。「二分論」がかつて比較的容易に日本の人々に受け入れられたのは、その当時の人々が戦争を経験しており、贖罪意識があったこともあるが、日中両国の「共通の利益」があったことも否めない。

 かつての日中両国の「共通の利益」はアメリカ帝国主義に反対することであり、中米国交樹立後はソ連の脅威に対抗することだった。改革開放後は、ソ連への対抗のほかに、経済面での関係強化があった。ソ連崩壊後は日中両国の安全保障面での共通の利益がなくなっている。そのため、政治問題で波風が立つことも多くなった。

 今後の日中関係の発展にとって必要なのは何を両国の「共通の利益」にするかだろう。中国は現在、世界第二の経済大国であるが、課題はまだ多くバージョンアップが必要である。そのため、日中両国の「共通利益」は経済面から見出す必要がある。長いスパンで見れば中国の建設している「一帯一路」の建設の参加を視野に入れることは、日中両国の「共通の利益」になりうる。