たとえ恋愛であっても?
客観的な価値に置き換えてしまうクセ

――記事を配信するためのアルゴリズムを組むときには、どんなことを意識しているんですか?

西尾:自分個人の感覚や興味ではなくて、客観的な重要度を重視しています。

西岡:仲間内では、西尾は記事の内容自体にぜんぜん興味がないのに、記事の数字にはやたらと敏感だよねと評判なんですよ(笑)。

西尾:よく言われるんですけど、自分でもそう思いますね(笑)。メディアの編集者さんのような記事の内容の良し悪しを判断する感性や勘は自分にはないけれど、こっちの記事のほうが世間的に注目度が高いとか、よく読まれているから配信されるべきだという考えは日々持っています。それなのになぜスマートニュースでは、この記事が3番で2番じゃなかったのか、みたいなことのほうが気になってしまうんですね。こういう不満を解消することを目的にしてアルゴリズムの改善を進めています。

――西尾さんは重要度を数値に置き換えて考えていらっしゃるんですね。

西尾:そうですね。客観的に数値化しようとするのはデータサイエンティストのクセかもしれません。

――ちなみに、人生の大切な決断をするときにも、データを分析して決めたりするんですか?恋人や結婚相手を選ぶときも、数値化してランク付けしたり(笑)。

西尾:つい最近、同僚の女性データサイエンティストとの雑談で、好みの異性のタイプを数値化しようという話をしましたね(笑)。容姿と性格と知性にそれぞれ何ポイント割り振るか、とか。数値に置き換えていけば、おのずとランキングや相手に求める優先順位が決まるじゃないですか。その具体的な結果を持って彼女に相談すれば、彼女が友達のインベントリ(在庫!)から「西尾くんにはこの子が合うかもね」なんて風にマッチングすることができるというわけです。

西岡:え、本当に?(笑)私は結婚相手までを数値に落として決めるのは厳しいなって思いますけどね。外資系コンサルの優秀なフレームワークオタクの友達ですら、散々データ分析した結果、離婚していましたから(笑)。

小田:僕も結婚に対しては、結構直感を信じたいタイプです。この本でもデータでマッチングするのは「出会いまで」じゃないですか。こういうデータ分析って、1万人いる候補者の中から10人を選び出すときにはすごく役に立つと思うんですよ。数学の力が使える。でも、絞られた10人の中から誰にするかを選ぶときに、数値の高い人の順に決めるっていうのはありえないかも。やっぱり最後は実際に会ったフィーリングですよね。直感って大事です。

――この本でも、2人の相性を判断する材料として、一見「宗教」や「政治的信条」などが重視されると思いきや、実は「ホラー映画が好き」とか「一人旅が好き」などの些細なところの意見が一致するほうが重要視されている事実が書かれていました。

相性に関する詳細な質問は、出会いサイトのユーザーを暴走させがちだ。すべての項目を「必須条件」に指定して、パートナー探しのチェックリストを作りたくなるのだ。犬好きで、不可知論者で、タバコを吸わないリベラルで、子どもがいなくて、セックスも上手じゃないと困る――。

しかし現実には、「怖い映画は好きか?」「一人で外国を旅したことがあるか?」といった何気ない質問に、相性を見極める「予知能力」がある。(中略)信仰や政治、外見など、目を引く大きな条件を過度に重視しがちだが、そうした要素は思われているほど影響がない。相性にまったく関係ないときさえある。

小田:そう、僕はそこにすごく納得できますね。出会いの入り口では、信条とかの違いでふるいにかけるけれど、実際に付き合うかどうかを決めるときには、まさに映画の好みのほうが大事になってくるんですよ。

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