ITベンダーが主催する
「IT以前の課題」を持ち寄るイベント

 米オラクルが4月11日~13日に開催した「インダストリー・コネクト2016」は、同社が重点業界とみなす8つの分野についての最新動向と、それらの業界間のIT活用の情報交流を目的としたイベントだ。2014年から始まり3回目を数えるが、今回はフロリダ州オーランドのリゾートホテルを使用しての開催となった。

 8つの分野とは、通信、教育、金融、小売り、公益(電気、ガスなどのインフラ)、ホスピタリティ(観光や外食)、ヘルス&ライフサイエンス(医療、製薬)、そしてプラント建設などの大規模プロジェクト管理だ。オラクルでは、この業界別ITサービスを「グローバル・ビジネス・ユニット」という組織で運営し、各業界の専門家を含む2万人以上の従業員が顧客企業の課題解決にあたる。

 参加者は各業界の経営幹部(Cクラス)、部門責任者が中心だが、期間中の入場者数は1500名を超え、100以上のユーザー企業による講演、150以上のセッションが行われた。ITベンダー主催のイベントとしては珍しく技術テーマのセッションがほとんどなく、業務の課題、法規制への対応など、各業界が抱える課題と解決策について議論が交わされた。

 オラクルがこの「業界切り」のイベントに力を入れる理由は、企業内でテクノロジーにかける予算の裁量がIT部門から事業部門へ移りつつある事情がある。事業の成長にITの活用が欠かせない時代だからこそ、決定権を持つビジネス部門のリーダーに対して、オラクルが持つ業界別のノウハウとそれを支える技術基盤を売り込むことが必要になる。このイベントは、その重要な機会のひとつに位置づけられている。

ビジネス部門のリーダーは
クラウド化について疑問はない

基調講演に立ったオラクルのマーク・ハードCEO。クラウド製品の強力なラインナップを改めて紹介した

 基調講演に立ったオラクルのマーク・ハードCEOは、満員の観衆を前にいきなり衝撃的なスライドを投影して語り始めた。

 そのスライドは、世界のIT部門予算はこの5年間減少傾向にあり、特に直近の2015年は前年比マイナス5%減と大幅に減少したというものだった。

「企業経営者はコスト削減を望んでいる。ITの効率運用でカギを握るのはクラウドだ。いまは過渡期で、企業は自社保有のサーバ(オンプレミス)とクラウドの混在環境でデータ統合をはかろうとしているが、いずれは1つのクラウドにまとめたいというのが本音だ。オラクルは統合したデータを載せるプラットフォームと、その上で動くクラウド対応のアプリケーションをそろえた唯一の企業だ」と自社のクラウドサービスの充実ぶりと、それを支える業界別組織の存在をアピールした。