世論調査が政治に大きな影響を与えるようになって久しい。
安倍政権以降の内閣は、つねに内閣支持率とともに語られ、首相自身も数字に一喜一憂する様が続いている。
結果がよければ「国民は理解してくれている」、悪ければ「数字がすべてではない」と都合のいい言い回しながらも、結局はそのデータに神経を尖らせている。
それは、毎週のように行われる世論調査の結果に拠って、新聞やテレビがその数字に拠った質問を繰り出し、記事を書くことを知っているからだ。
つまり、結果がどうであろうと、世論調査という「世論」を無視することができなくなってしまったのだ。これは健全なことだろうか。
確かに、よく言えば「世論調査民主主義」だが、実際は「世論調査独裁」にすぎない。それは過去の政権がこれに振り回され、そして斃れていったことをみてからも想像に難くない。
総理番記者のぶら下がり取材という
“奇妙な会見スタイル”も問題の一因
埼玉大学の松本正生教授によれば、毎週のように頻繁に世論調査が行われるようになったのは、2001年の小泉政権誕生以降のことだという。
RDD方式(※)の電話による調査は、簡易化とともに調査回数を増やすことに寄与したようだ。だが、そうした頻繁な世論調査の攻撃に耐えられたのは、小泉首相までだ。
鳩山首相までの4人の内閣は、その数字の攻撃に晒され、ことごとく散っていった。どの内閣にも共通しているのは、就任当初の数字がいいことに気をよくして、世論調査を甘くみることだろう。
3ヵ月も過ぎると、ぶら下がり取材という世界にも類を見ない奇妙なスタイルの「総理会見」によって、連日、総理番記者たちからの同じような質問の嵐に晒される。
(※編註)Random Digit Dialing方式。電話番号の市外局番・市内局番を除いた下4桁を、コンピューターで発生させた乱数を基に作って発信する方式。従来は電話帳などの実在する電話番号データから抽出していた。