イラスト/びごーじょうじ

 発明王トーマス・エジソン。子どもの頃、伝記で読んで知ったという人も多いだろう。日本では努力の発明家と紹介されることが多い。

 たしかに彼は独学の末に数多くの発明を成し遂げた稀な人物だったが、なかには改良や盗用に近いアイデアも多い。例えば有名な動画撮影機キネトグラフは部下のウィリアム・ディックソンが発明したもの。また、白熱電球の発明者として紹介されることがあるが、実際の発明者はジョゼフ・スワンである。

 エジソンの功績はその商用化と発電から送電までのシステムの事業化であり、実際の彼は研究所で組織的に商品を開発する実業家としての顔も持っていた。この発明工場こそ、エジソンの最大の発明という歴史家もいる。(『エジソン発明工場の没落』(朝日新聞社)より)もっとも事業自体はうまくいかず、電力事業もエジソンが直流にこだわった電流戦争に破れ、最終的には失敗した。

 それでもエジソンが大発明家であることには疑う余地はない。電気の需要は夜に大きく、朝は少ない。これを解消するためにさまざまな家電製品が生みだされた。その一つとしてエジソンは扉を開閉するたびに自動的にパンが裏返しになるトースターを考案する。

 ところが1日2食が当たり前の時代、当初は売れ行きがよくなかった。そこでエジソン社はマスコミを使って「1日2食は体に悪い。健康のために朝食を食べよう」というキャンペーンを張る。これが功を奏し、トースターはよく売れたそうだ。同様の朝食を食べようキャンペーンは後にケロッグ社が展開して同じように成功を収めているが、エジソンはライフスタイルを売る天才だったのかもしれない。

 気になるのは長寿だったエジソン自身の食生活である。『快人エジソン』(浜田和幸著)によるとエジソンは「自分が1日に18時間も働ける理由は、とにかく食べる量と眠る時間を少なくしているからである」と語っている。