土地購入前から何度も言われていた、この言葉の意味を、まさに実感として知ったのです。
さらに想定外だったのは、頼りにしていた夫が蓋を開けてみれば「ごめん、仕事で行けない」という状態続きでまったくアテにならなかったこと。つまり、この草との闘いの最前線を担う役は、おのずとわたしに振り向けられたのです。
え~、ずるいじゃないか!と憤慨しても仕方ありません。夫には、しっかり仕事もしてもらわにゃならない。大きな出費があった後ですから。
となると、草刈りはわたしがやるしかないのです。
やるしかないことは、やるしかないのです!
先っぽに高速で回転する円盤状の刃の付いた長い柄を肩紐をかけて支え、地面の雑草を刈る「刈払い機」という農機具。このときから、田舎暮らしの相棒となりました。
不動産屋さんに紹介された西田さんにこの使い方を教えてもらい、ムリなくね、ちょっとずつでいいからね、と言われながら、シュリシュリシュリシュリシュリと雑草を刈ることを覚えていきました。
西田さんが刈ると、刈り残しがまったくなく、刈った草が同方向に美しく倒され、まとめられ、干して集めて燃やすときに実に都合よい塩梅になります。
対してわたしが刈ったあとは、まるでジャリッパゲ。刈った草がそこらじゅうに散乱し、刈り残しの草はだらしなくひよひよと立ち上がり、見た目も悪いし後始末もしにくい。「草を刈る」のにこんなに技量の差があるのかと驚愕です。
集落のおじいさん、おばあさんが草刈りしたあとも同じくらい美しく刈られているところを見ると、みんなこれくらい草刈りうまいんだ……何気なくやっているけれど、本当は、本当はみんなすごいんだ!と、尊敬の念が湧きあがってきます。
また、ひとくちに草を刈るといっても、土地のコンディションによって作業能率も疲れも変わってきます。
長く伸びた草は刈るときにすごく重たかったり、マメ科の蔓植物は刈ると刃に蔓がひっかかって回らなくなったり、ときには石をガツッとはじいてしまって危ない思いをしたり、竹や小木など固いものを刈るとたちまち刃がぼろぼろになることを知ったり。
そんな中、長袖長ズボン長靴、ゴーグルなど、きちんと身を守る格好をしなければ痛い目にあうことも身に沁みて、徐々に合理的で安全な野良仕事スタイルが板についてきました。