ヨーロッパの都心部ではすでに相当な数の電気自動車が走っている。イギリスでは、インドの「REVA」、フランスでは同国製の「MEGA」、ノルウェーでは同国製の「Think!」や「Buddy」などだ。

 また少量生産型の電気自動車では、独「City-El Fact Four」、独「TWIKE」、「SAM EVⅡ」、伊「Tazzari Zero」、伊「Starlab」。商業車向けとしては、ガソリンエンジン・ディーゼルエンジンを電動車両にコンバート(改造)する事業者も伊「Piaggio」、独「eWolf」などがある。さらに軍事用としては、電動大型装甲車や無人の電動爆弾処理車も存在する。

様々な形状のAC充電器。その種類は「星の数ほどある」(欧州電気機器メーカー関係者)

 これら電気自動車の充電方法は、「ACが当たり前だ」(欧州電気自動車メーカーの複数関係者)。ACとはAlternation Current(交流)。全世界の家庭用電源は交流が常識化している。その定格電圧は国によって差があり、欧米中など主要国は220V~240Vが主流であり、日本の100Vは世界的に見ると少数派に属する。

 そうした欧州電気自動車市場に、日本が独自に開発したDC(Direct Current、直流)の充電、「チャデモ」が本格参戦したのだ。

 ドイツで開催された電気自動車のフォーラム・展示会「eCarTec」(2010年10月19~21日・ニューミュンヘンメッセ)には、独仏米から30社近い充電器関連の出展があった。その多くはACであり、唯一のDCである「チャデモ」の急速充電器の出展は合計7社だった。具体的には、日本から2社(高岳製作所/東京都中央区、アルバック/神奈川県茅ヶ崎市)、フランスから2社(SGTE、DBT)、オランダから1社(epyon)、アメリカから2社(エアロヴァイロメント、エーカーウエイド)だ。

 「チャデモ(CHA de MO)」とは、東京電力が基本設計した「電気自動車向け急速充電の規格」である。「モービル(自動車)のチャージ(充電)」をラテン語っぽく語呂合わせした。また2010年3月15日、チャデモ協議会が発足し、チャデモ・プロトコル(通信言語/通信方式)の国際標準化に向けた活動を推進している。幹事会社は東京電力、トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車、富士重工業。10月19日現在の正会員は世界各地の104の企業と団体で構成されている。  

 DCによる急速充電は、電気自動車の本格普及のカギを握ると言っていい。最大巡航距離160km(カタログ値)の電気自動車の場合、日本の一般家庭で定格電圧AC100Vで満充電するには14時間前後かかる(電気工事などでAC200Vに引き上げた場合は7時間前後)。一方、急速充電ではわずか30分間で満充電の約80%に達する(リチウムイオン二次電池の特性で、容量80%以上での充電効率が極端に落ちるため、80%充電時で切る)。電気自動車にとって急速充電は、「長距離走行には必然」であり、外出先でのガス欠ならぬ電欠を防ぐための「もしものための保険」でもあるのだ。電気自動車と急速充電は「鶏と卵」の関係にあるともいえる。