昨年、コンビニエンスストアがそろって参入しドーナツ専門店との競争が激しくなったドーナツ市場。セブン-イレブン・ジャパンが2015年の8月にドーナツの全店販売を開始して以来約1年。ローソン、ファミリーマートのコンビニ大手も追随したが、その後の動向が気になるところだ。コンビニ大手の参入でドーナツ専門店の「ミスタードーナツ」は業績に打撃を受けているのは間違いない。しかし、新規に参入したセブン-イレブンを始め「コンビニが完全勝利しているとまで言い切れない状態」と関係者は語る。いわばミスドが押されているのは事実だが、今のところ勝ち負けの判断はできない状態だ。果たして、「ドーナツ戦争」の行方は、どうなるのだろうか。(流通ジャーナリスト 森山真二)
コンビニのドーナツ市場参入以降
ミスドは赤字続きで歯止めかからず
「当面の売り上げ目標600億円」――。
セブン-イレブンが15年、ドーナツ市場参入にあたって掲げた目標だ。セブンの店舗数は1万8000店だから、セブンのドーナツ「セブンカフェドーナツ」は1日1店あたり90個を販売しないと目標に届かない計算。だが、関係者によるとスタート当初は「1日1店あたり100個程度を販売していたようだが、その後は落ち着き15年度(2016年2月期)は400億円程度で着地したようだ」といい「まだ目標の600億円までは達していないのではないか」とみる。
セブンは当然ながら、今期の17年2月期末までには600億円を目指す計画のようだが、セブンでさえもこのようなスローな状況だから、大手コンビニチェーンも推して知るべしだ。「ドーナツ戦争」と騒がれたコンビニ各社のドーナツ参入も当初の熱狂はない。
これに対し、コンビニ大手の一斉参入という荒波に襲われたダスキンが運営するドーナツ専門店大手「ミスタードーナツ」の状況はどうか。
運営会社のダスキンの決算によると、「ミスド」のチェーン全店売上高の推移は14年3月期が1030億円、15年3月期が1020億円、16年3月期は前期比10.3%減の915億円となった。ミスドを中心としたフードグループの営業損益は15年3月期に約2億円の赤字だったが、16年3月期は約14億円に拡大、また17年3月期第1四半期(16年4~6月期)も赤字が続いており歯止めがかかっていない。
決算数字を見ると、明らかにコンビニがドーナツ市場に参入した15年から業績が悪化していることが分かる。損益もドーナツの値下げなどで収益を圧迫している様子がうかがえる。