日本人のマスク着用状況に見る
「新型肺炎パニック」への恐怖耐性
新型肺炎がパンデミックになりそうな勢いで、拡散しています。1月30日段階の発表では、日本国内で確認された感染者は14人にのぼり、今回の震源地となっている中国・武漢に滞在歴がない日本人への感染があったことも、発表されています。
言い換えると、国内でも人から人への感染が確認されたということです。同時に、新型肺炎を指定感染症にすることも閣議決定されました。
予めお断りしておきますが、今回の記事は医療関係ではなく、行動経済学の記事です。私は、新型肺炎のリスクが高まっているにもかかわらず、マスクを着用している日本人がまだそれほど多くないのではないかと感じています。それはなぜか、ということから話を始めたいと思います。
私は1月23日に武漢市が封鎖されて以降、外出の際には必ずマスクを着用しています。もちろん、理由は新型肺炎が怖いからです。グローバル都市・新宿に住み、世界中から集まった人々と触れ合う可能性が高い環境で、「発症したら苦しいうえに致死率が高いという病気に、もしも感染したら……」と思うと、マスク着用は必須だと思っています。
しかし不思議なのは、周囲に同じ考えの人がまだ少ないこと。新型肺炎の深刻なニュースが大量に報道されるようになった直近はさすがに増えたものの、つい先日まで、街を歩いていてもマスク着用者はまだ少数派でした。JR山手線に乗ったときなど、同じ車両の中でマスクをつけずに咳こんでいる乗客が2人もいたにもかかわらず、車両内のマスク着用者は目視した限り、3割程度でした。2003年に発生したSARS騒動、2005年の鳥インフルエンザ騒動などを思い起こすと、世の中はまだ様子見的な状況に見えます。
一方日本では、マスクが品不足で買えないという問題が起きていると報じられています。それらの「パニック買い」されたマスクはいったいどこで使われているのかと不思議になりますが、中国人による「マスク爆買い」の影響もあり、マスクが欲しくても手に入らず、仕方なく着用せずに外出している日本人も、少なくないのかもしれません。