復興の現場にも「見える化」を。<br />支援活動を非効率化させる、指標なき東北復興9月23日から10月22日までの30日間、銀座三丁目の文祥堂イベントホールで開催してきた連続セミナー「GINZA☆30DAYS」。参加者の方々からも多大な寄付をいただいた。イベントの収益(寄付金や売上げの一部など)はすべて、参加団体を通じて東北の復興支援活動に役立てられる。

 銀座三丁目の文祥堂イベントホールにおいて、筆者が代表を務める復興支援団体「東北ライジング」が1ヵ月間にわたって開催してきた連続セミナー「GINZA☆30DAYS」も無事に終了した。参加・協力いただいた団体、企業は20を超える。日本財団の町井則雄氏やアショカ・ジャパンの渡邊奈々氏など多彩なゲストを招いてのトークライブ、そしてプラン・ジャパン、シャンティ国際ボランティア会などさまざまな団体、企業によるセミナー、講演会、報告会が連日行なわれた。

 ひと月の間、毎日のように社会セクターのキーパーソンと対談したり話を聞いたり交流したりしていると今まで見えなかったことが見えたり、新しい情報が得られたりする。新しいネットワークもできる。そこから新しいプロジェクトも生まれてくる。今回はその中から、今後の復興支援に特に役立つと思われる新プロジェクトをご紹介する。

話題の支援策も
需要に追いつかない実態

 まずは漁業関連。漁業の復興は東北復興の象徴でもあり社会的な関心も高い。漁業支援を行なっている団体も数多い。しかし、正直に言って筆者にはこれまでピンとくる復興支援策が見つからなかった。

 漁業支援策として人気の高いものに、寄付を集めて中古の漁船を購入、被災地の漁協に提供するという活動がある。東北沿岸には約2万艘の漁船があったが、その9割が津波により流されたり破壊されたりしたという。船がなければ漁はできないわけで、岩手県などは早期に2000艘の新造船を発注するなどしているが、あまりに大量の需要にメーカーも対応できていないという。

 そこで、中古の漁船を全国各地で購入または寄贈してもらって、東北の漁協に提供するという活動を多くのNPOやボランティア団体が行なっている。しかし、漁船というものは捕る魚の種類や作業内容によって構造も船の形も違う。大きさも違う。関東や四国、九州で使われている漁船をそのまま東北で使えるわけでもないのだ。また、中古船だけでは、残る約1万8000艘もの膨大な需要を満たせるとも思えない。船を失った漁師の皆さんに「もう一度、海に出る!」という気持ちを持ってもらうためには中古船提供は有効かもしれないが、それだけでは大きな漁業復興策にはならない。

 もうひとつ、漁業支援策として人気の高いものにオーナー制度や小口投資による金銭的な支援がある。たとえば、一口1万円で養殖牡蠣のオーナーになってもらって、養殖業者に「出資」。その資金で事業の再生を行なってもらう。2~3年後、養殖が復活して牡蠣が生産できたら獲れた牡蠣がオーナーに送られるという仕組みだ。

 代表的な例が「SAVE SANRIKU OYSTERS」というプロジェクトで、同プロジェクトのウェブサイトによればこれまでに約2億5000万円の資金を集めている。これはこれで素晴らしい取り組みだとは思うが、三陸の牡蠣産地復興のためには100億のお金が必要だと同プロジェクトも明言している。つまり、達成率はわずか2.5%なのである。

 同プロジェクトはテレビ、新聞、雑誌などで数多く紹介され、同様の支援策としては最も注目も支援も集めていると思う。2億5000万円もの資金を集めているのも立派だと思う。東北支援として最も成功したプロジェクトのひとつだろう。それでも、必要とする資金の2.5%しか集まっていない。

 中古漁船の提供もオーナー制度も、残念ながら大きなインパクトを与えることができていない。そして、なによりもこれらのプロジェクトが東北漁業の復興に役立つとは思えない。当連載でも何度も伝えているように、復興とは「Build Back Better」、以前よりもより良い形に戻すことがテーマである。復旧も大事だが、復興はより重要である。