日本郵政が郵便、銀行、保険の3事業に続く「新たな収益の柱」として期待をかけるのが、不動産事業だ。都市部の一等地に点在する郵便局舎や社宅などを筆頭に、日本郵政グループが抱える不動産は、なんと約2.6兆円にも及ぶ。だが、それらの優良資産を有効活用できずに“持て余している”実態がある。 特集『郵政消滅』(全15回)の#4では、日本郵政グループの不動産事業の死角を検証する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
一等地の局舎や余剰スペース
不動産2.6兆円の活用が急務
「日本郵政は、社会常識ではなく“郵政の常識”がまかり通る会社。ただでさえ不動産は素人なのに、対外的な折衝が重要な不動産事業を柱に据えるというのは、彼らには荷が重いのではないか」。ある郵便局OBは、そう皮肉を込めて言う。
金融2社の株式売却や郵便需要の減少で事業衰退が必至な日本郵政が、日本郵便、かんぽ生命保険、ゆうちょ銀行に続く“第4の柱”として期待を寄せるのが、不動産事業だ。
実は、日本郵政は隠れた「大地主」企業だ。
郵便局舎や社宅など多くの施設を自社保有する上、かつての鉄道輸送の名残から、各地の中央郵便局の多くが駅前の一等地に所在する。
一方で、その空間が有効活用されているとは言い難い。低層の建物が多く容積率を効率的に消化できていないほか、施設内には余剰スペースも多い。「ある首都圏の日本郵便支社の“支社長室”では、キャッチボールができるぐらいの広さがある」(別の日本郵便OB)といった声も聞こえてくるほどだ。
抱える不動産は、土地と建物を合わせてざっと2.6兆円。この宝の山を生かさない手はない。
中期経営計画では、現在400億円程度の不動産事業の営業収益を2025年までに900億円と倍増させる目標を掲げた。そのために、グループ資産に加え外部の不動産開発も含め、5年間で5000億円の投資額をつぎ込む予定だ。
不動産の活用は積年の課題であり、ここにきて不動産事業のてこ入れにいよいよ本腰を入れ始めた。しかし、不動産事業を新たな収益の柱とするには、一筋縄ではいかない事情もある。
日本郵政グループの不動産事業の死角はどこにあるのか。