東京電力 解体#2Photo:Dilok Klaisataporn/gettyimages

巨大企業解体へのカウントダウンが始まった。電力業界の王者、東京電力グループの最終形態が見えてきた。その過程で、小売り事業を担う東京電力エナジーパートナー(EP)は、一部売却に向けた地ならしを始めたことが分かった。特集『東京電力 解体』(全5回)の#2は、“地ならし”の中身や東電EPの売却先候補について詳報する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

東電が小売り事業の一部売却へ地ならし
「契約の精査が始まった」

 今年4月ごろ、東京電力ホールディングス(HD)を巡って、ある情報がエネルギー業界を駆け巡った。

「東京電力エナジーパートナーが売却に向けたシミュレーションを始めている」

 東京電力エナジーパートナー(EP)は、小売り事業を担う東電HDの子会社である。2016年に始まった電力小売り全面自由化以降、顧客流出が止まらず業績不振に陥っている。

 東日本大震災の影響により発生した福島第一原子力発電所の事故での東電HDの最大ミッションは、福島第一原発の廃炉、被災者への賠償、福島復興の完遂であり、その費用は少なくとも21.5兆円にも及ぶ。エネルギー業界では、業績不振の東電EPは、その費用を捻出するために売却されるとまことしやかにいわれていた。

 そして東電HDは今年7月、中期経営計画「第4次総合特別事業計画」で不採算事業の撤退・縮小を初めて打ち出した。まるで東電EPの売却シミュレーションの動きを裏付けるかのようだった。

 第4次総特を見た東電EPのある社員は「いよいよ来たかと。うちが売却されるのは本物だなと感じましたよ」と肩を落とす。

 東電HDが第4次総特で打ち出した不採算事業の撤退・縮小は、東電EPの売却とみられる。東電EPの内情に詳しい関係者によると、東電EP売却の手始めとして、部分的な切り離しに向けた地ならしを実際に行っているという。その地ならしとは、「契約の精査」である。

 次ページ以降では、「契約の精査」に至る背景とその中身、そして東電EP売却先の候補と東電グループの「最終形態」などについて詳らかにしていく。