後悔しない「歯科治療」#6Photo:PIXTA

全国の歯科医院の数は6万7000を超える。コンビニエンスストアの数より1万件以上多い。その中には当然、質の悪い石ころも交じっているはずだ。だが、悲しいかな、その良しあしは外からうかがい知れない。そこで『決定版 後悔しない「歯科治療」』(全23回)の#6では、歯科医院の内部事情をよく知る歯科衛生士4人に、これまで「何を見てきたか」を語ってもらった。(構成/医学ライター 井手ゆきえ、聞き手/ダイヤモンド編集部)

「自分はこれを使ってきた」と古い材料に固執
知識と技術のアップデートを拒む院長の姿

出席者
Aさん:歯科衛生士歴15年超、個人経営のクリニック、歯科医院グループ、総合病院(リハビリテーション科所属)勤務などを経て、独立。歯科クリニックの開業コンサルタントとして幅広く活動中。
Bさん:歯科衛生士歴4年目。それ以前に20年以上、歯科助手として歯科医院グループに勤務。歯科の変遷を目の当たりにしてきた。
Cさん:歯科衛生士歴5年、現在は一般企業に勤めている。なぜ、歯科衛生士を辞めたのか……。
Dさん:歯科衛生士歴10年ちょっと。新卒で初めて勤務した個人経営のクリニックで、国家資格を持たない助手から「指導」を受けるという衝撃のデビューを果たす。

――早速ですが、私たち一般人にとって歯科ほどブラックボックス化している医療はありません。今日はまず、歯科の実態を教えてください。

A 歯科の一番まずいところは、知識や技術をアップデートする機会がほとんどないこと。医科は卒業後も研修医制度や専門医制度、あるいは所属学会などで生涯学習の機会がたくさんありますよね。歯科医は学会や地域の歯科医師会にも所属せず、個人経営のクリニックでお山の大将をしている限り、まず無理です。「自分は昔から、こうしてきたんだ」と言い張る先生も多い。歯科医が個人技に自信を持ち過ぎているというのかな。それで痛い思いをするのは患者さん……。

D 重度の虫歯を抜かずに保存するための根管治療(歯内治療)では、歯の中の根管(神経が通っている管)をきれいに掃除して抗菌薬を入れて仮封(ふた)をするんですよ。その仮封の方法や材料も日々進化しているのに、すでに販売が終わった材料にこだわり「○○はないのか!○○を探してこい!」と譲らない先生とか……。

B マジに?確かに一昔前は教科書に載っているような材料だったけど、「○○」はもう化石だよね。手技も変化しているし。アマルガム(水銀の合金で歯科用充填剤として使われてきた。安全性への懸念から使用を禁止している国もある。日本では2016年以降、保険適用から外れた)と一緒。手技が技術の進化に追い付いていない。私たちの勤め先はバラバラだけど、古い材料に固執する医者に遭う機会は同じくらいあるよね(笑)。