ゲームのルールを決めるのは
やっぱり米国

 足もとで市場の揺り戻しは生じたものの、今年9月以降、為替の円安が急に進み、一時は110円台と2008年以来となる6年ぶりの円安水準になった。筆者が為替について長らくストーリーラインとしてきたのは、「達磨さんが転んだ」とした考えだった。

 下の図表にあるように、戦後の為替の5年、10年といった中期トレンドの転換は、すべて米国サイドにあったとし、「ゲームのルール」を決める「鬼」としての主導権はいつも、米国サイドにあったとするものだった。

 その論点から見て2000年代以降は、図表中の(6)のように2007年以降、米国が大恐慌以来とも言えるバランスシート調整になったなか、異例の量的緩和であるQE1、QE2、QE3を実質的に用いて自国通貨安政策を行ったことが、極端な円高につながった。

 一方、2013年以降、米国のバランスシート調整が進展し、米国が自国通貨安政策を転換させたことで、図表中の(7)で示した為替の転換が生じた。

2013年以降は
5年単位の円安基調に入った

為替はやっぱり「達磨さんが転んだ」<br />――高田創・みずほ総合研究所チーフエコノミスト

 筆者がストーリーラインとして、2013年以降円安基調に転じたとした認識の背景には、以上の考え方があり、足元の状態は5年単位での円安局面にあるとするものだ。

 そこでは、今日ポイントとなる米国サイドの状況は、今年10月3日に発表された9月の雇用統計が予想以上に改善したことも含め、金融緩和の出口観測が強まる中ではドル高の潮流は続きやすいとするものだ。今のところ、これまで為替政策に影響を与えてきた米国の産業界のドル高不満もあまり顕現化していない。