香港普通選挙法案が否決
「偽の民主主義」は回避できたが――。

2017年香港普通選挙法案“否決”で<br />見えない「真の勝者」「偽の民主主義」は回避できたが……

「6月18日、我々は残念なことを見た。香港の反対派議員が独断的に反対票を投じたために、香港特区政府が議会に提出した普通選挙法案が可決されなかったのだ。これによって、2017年、第五代香港特別行政区行政長官は普通選挙によって選出することができなくなってしまった。引き続き、選挙委員会によって選出するという現行のやり方を採用することになる。この結果は香港社会の主流な民意に背くものであり、中央政府としても見たくなかったものである。反対派は香港における民主主義の発展を阻害した全ての責任を負わなくてはならない」

 2015年6月19日、中国共産党の党機関紙《人民日報》は、同紙評論員の名義で発表した論評の冒頭でこのように主張した。

 昨年8月31日、中国の全国人民代表大会(全人代)が香港における政府の首長である行政長官を選出する選挙改革法案を“決定事項”として発表した。業界団体などから選出された1200人からなる「指名委員会」が2~3人の候補者を選出し、そこに対して香港の有権者約500万人が1人1票に基づいて投票するという枠組みだ。この法案が香港の立法会(議会)によって可決されれば、2017年から香港の行政長官は“1人1票の普通選挙”によって選出されることになっていた。

 結果は、冒頭にあるとおりである。香港立法会に所属する70名の議員のうち、28名が反対票を投じ、可決に必要な3分の2に達しなかった。また、“親中派”と言われる議員の大半は採決の途中で離席し、賛成は8票にとどまった。これによって、2017年の香港行政長官は、1200人の選挙委員のみが投票権を持つ現行の制度で実施されることになる。と同時に、“1人1票の普通選挙”によって香港の行政長官が選ばれるのは、早くても2022年に持ち越される見込みとなった。

 昨年8月31日に全人代によって発表された“決定”から、その後、約3ヵ月に渡って香港の中心部で断続的に続いた“占中”(Occupy Central)活動といった動向に関しては、本連載でも扱ってきた。

●香港「占中」の“北への波及”を恐れる中国政府 強硬姿勢は真の民主主義と自らの退路をも潰す(2014年10月7日)

●中国が香港「占中」対策で貫いた 内圧『傍観』・外圧『強硬』のダブルスタンダード戦略(2014年12月16日)

 “占中”は“決定”に抗議を示すために実行されたものだ。そして、6月18日の採択において、“民主派”と言われる議員たちが立法会に提出された“決定”に反対票を投じた理由も“決定”のなかにある。