前年比微増の影響はどこに出るのか
例年、もっとも鮮明に各年の中学受験動向を映し出すのが、9月に行われる模試への参加者数とそこで記された各入試の志望者数の変動である。7月までの四模試への参加者数は前年比で微減傾向だったが、9月模試では前年比0.9%増と微増に転じている。2022年入試が過去最大級の受験者を集めていたことを考えると、23年も首都圏中学受験は人気が継続しそうといっていいだろう。
以前、7月に実施された四模試で記された志望校(入試)の前年比増減について、男子・女子受験生それぞれを取り上げたが、今回は9月模試の女子受験生編である。7月と比べて動きのある入試を中心に見ていきたい。
全体的な傾向として、前年比で10%以上志望者数が増減した入試の数を比べてみると、7月には減った入試が増えた入試より5割多かった。これが9月には1割強と、志望者数が減った入試の数自体が少なくなっている。
一部の大学付属校を除けば、男子に比べて、女子受験生は競争回避的で、安全志向である。競争状況を見て、志望校の偏差値水準を徐々に下げていく。そうした動向は、9月模試でも垣間見られた。前年比の志望者数増減を7月と9月で並べてみると、高倍率だった入試や模試での志望者数の増加傾向が顕著な入試を敬遠する動きがうかがえた。なお、ここで言う「実倍率」とは22年入試のもので、それ以外の倍率とは「予想倍率」を示す。
23年に校名変更・共学化+新校舎で初めての入試に臨む芝国際は、ここでは取り上げていないが、どこの学校の志望者が流れてくるかが注目される。22年入試での広尾学園小石川のような状況にある。
埼玉と千葉で行われる1月入試の、前年比で大きく模試での志望者数が伸びているものから見ていこう。22年の受験者数が831人という10日の埼玉栄(1回)は志望者数が増えているものの、7月よりも緩和気味だ。注目は22年に493人が受けた10日午後の2回難関・医学で、2倍台後半まで上がる可能性が出ている。
例年全国最多の受験生が殺到する栄東(A日程)は、23年も10日と11日の希望選択制となる。22年に2479人を集めた10日は実倍率が1.53倍だったが、2倍近くまで増えるかもしれない。同じく増加傾向にある12日の東大1回は、3倍をうかがう情勢にある。
他に10日では、22年の受験者数が196人だった武南(1回前)は2倍を超えるかもしれない。その点、星野学園(1回)、細田学園(1回)と浦和実業(1回AM特待)は増加基調ではあるものの、1倍台後半にとどまりそうだ。
千葉では、20日午前の日出学園(I期)が2倍を超える勢いにあり、午後には、市川の定番併願先である昭和学院秀英(午後特別)が6倍超えも視野に入れている。同じく20日午後では、昭和学院(算数)が3倍台半ば超え、二松學舍大学附属柏(グローバル1回)が2倍に迫る様相を見せている。25日の麗澤(2回)は6倍に迫る人気で、28日午後の3回も5倍超えの勢いだ。