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補習塾の要素も備えた学童として、200人近くの主に中国人の子どもが学んでいる

中学受験の分かれ目は

 私は、偏差値(四谷大塚合不合80)が40台にも達していない子は、無理に中学受験をせず、高校受験の方がいいと思います。少なくとも半分の子どもは中学受験よりも高校受験向きだと思います。

――でも、親には聞いてもらえないわけですね(笑)。

 残念ながら(笑)。合格した学校のことよく知らずに進学したため、大変な子どもたちの例をいくつも見ています。生徒の世帯収入がとても多くて自分たちとは生活水準が違ったり、校風がなじまなかったりで、せっかく難関校に受かっても、不登校になっている子どもが何人もいると聞いています。

――親の思いが強すぎるのでしょうか。

 子どもが受験したくなくなっても、親の競争心とメンツもあって、中学受験を諦めることができなくなるようです。

 スポーツで全国レベルの成績を出しながら、中学受験のためにやめさせられ、受験には失敗し、再びそのスポーツに戻ることができなかった子がいます。上位の高校に受かるくらいの能力がある子なので、そのスポーツを続けながら高校受験をすればよかったのにと、今でも思います。

――逆に、どのような子なら中学受験に向いていると思いますか。

 小学校の1年生から3年生であれば、まず学校の勉強と宿題を余裕でこなしている。読書習慣があり、字を丁寧に書け、知らないこと学ぶことが楽しいと思えることです。算数の能力は、うちでやっている「そろタッチ」や「パズル道場」のスコアを見れば判断できます。

――つまり、10歳前には中学受験の向き不向きが判断できるというわけですね。ここで少し、付さんご自身についても伺いたいと思います。

 IT企業で働く夫と結婚し、23歳で来日して、お茶の水女子大学大学院で研究し、その後は中国語を教えていました。最初はJR京浜東北線「蕨」が最寄り駅のUR公団「芝園団地」に入居しました。保証人がいらないこともあり、全世帯の3分の1くらいが中国人世帯でした。

――川口市は外国籍の住民が増えていますね。中国人も2万4000人以上外国人登録されているようですし。

 2人の子どもは日本で生まれました。小学校に入る前後で浦和に移り、地元のさいたま市立仲町小に入りました。私はいい学区なのでその必要はないと思っていましたが、この学校に通う中国人家庭はほとんどが中学受験をしています。

 娘には中学受験をさせませんでした。東日本大震災の時、半年ほど上海の祖父母の所にいたのですが、帰ってから日本語を忘れてしまいました。スローペースの子だったので、中学を受験させなくてよかったと思っています。

――娘さんは地元の公立中学に通い、高校受験をしたわけですね。息子さんはいかがですか。

 姉より3歳下の息子は、「小学校がつまらない」からと、自宅から歩いて行ける早稲田アカデミーに通いました。小2から全国統一小学生テスト(四谷大塚)で50位内に入り、算数と国語が得意だったので中学を受験させました。中国語もHSK4級です。栄東、灘、開成、渋谷教育学園渋谷、聖光学院、筑駒に合格し、筑駒に通っています。

――息子さんは中学受験が向いていたわけですね。

 片道2時間かかる娘の通学と息子の学校のことも考え、京王井の頭線沿線に引っ越すことにしました。これからは、私が川口駅まで通うことになります。

――川口、浦和、そして東京と、まさに孟母三遷ですが、通勤しながら学校を維持していくのも大変ですね。

 wingsを始めたとき、子どもは2人とも小学生で、「自分の子を放っておいて、他の子の面倒を見るのはどうなのか」と夫に叱られたこともあります。経済的にはそれほどメリットはないのですが、生徒が成長していくことがうれしいので続けています。

 そろそろ午後2時なので、近くの小学校に、ここに通う子どもたちを迎えに行ってきます。