2019年7月、高校1年生のアメリカ・メリーランド州ボルモチアにおける海外研修を工藤校長が視察 写真提供:聖光学院

不登校にも私学のネットワークで

工藤 「個の独立、群の創造」ということを、私は最近の私学関係者へのスピーチの中でずっと言い続けてきました。それの表れとなったのが、コロナの影響で少し遅れましたが、2020年6月から始めた不登校の生徒を対象とする「神奈川私学修学支援センター」です。個々の私学では対応がむずかしく大変ですが、私学協会全体であれば可能になります。

 募集枠は10人に設定しましたが、現在15人以上がいます。今は3学期なのでいったん締め切り、また4月から募集します。

――それぞれの学校に籍を置きながら通うということは、卒業は籍のある学校からということになるわけですね。

工藤 その通りです。単位の認定は、原籍校が行います。できる限り原籍校に戻り、そこでの生活を取り戻すことができるシェルターにしようと思っています。

 今回はコロナ禍という事情もあり、開始は6月になりましたが、次年度は復帰すると申し出て来た生徒も2人いました。嫌になったらまたこっちへ戻ると言っています。彼らにはもう一つ帰るところができたわけです。

 この支援センターは設置してよかったと思っています。神奈川県の協会は、自前の私学会館を持っているので、これを活用できました。横浜市だと各自で受け入れる施設もあるようです。公立の中学校には、不登校になった時それぞれの地元でそういう所はありますし、公的な場所なので私学の生徒も行くことはできます。ところが、私学の生徒はそこには行きづらい。小学校を出て私立中学に行ったので、本人たちには行きづらい場所になります。

――公立には戻りにくいんですよね。

工藤 少子化の時代、勝ち残り競争ではなくて、それぞれの子が持っている良さを生かしてあげようと。それぞれの生徒が舞台を持ちながら、その中で生き生きと育つことができるようにしていくことが発想の原点です。

 現在は、桐光学園の伊奈博先生、浅野の阿部義広先生、森村学園の高橋敬三先生といった元校長先生方に加えて、横浜国立大学や関東学院大学の学生も一緒に参加して教えています。