望月伸一郎(もちづき・しんいちろう)
栄光学園中学高等学校校長
1959年、東京都台東区生まれ。生後すぐ、母親と同じカトリックの洗礼を受ける。小中高を地元の公立校で過ごし、上智大学法学部を卒業後、社会人経験を経て、社会科教諭として栄光学園に。剣道部を創設し、最初の顧問となる。2009年教務部長、15年から同校第6代校長に。創立70周年を機に、校舎も建て替えた。中学生から続けているチェロ演奏で、栄光フィルに参加することも。
都心の学校にはあり得ないぜいたくな空間
5年前の創立70周年を機に、校舎を一新した栄光学園。全校生徒数1000人程度の学園にしては、11.3ヘクタールの広大な校地に2階建ての校舎など、ぜいたくな空間にあふれている。新型コロナ禍は、鎌倉にある学園も直撃した。
――この2階にある展望室は、見晴らしが良いですね。以前、こちらの校舎を見に、開成の方がいらっしゃいませんでしたか。
望月 はい、お見えになりました。
――休み時間になると生徒さんが校舎から校庭に飛び出していく栄光学園のこの感じを、開成さんは現在工事中の校舎整備でも生かすことにしたそうです。実際に学校を訪れてみないことには、こうした学校の雰囲気は分かりませんね。
望月 南棟にある普通教室がグラウンドに面しています。晴れていると、右手には大きく富士山も見えます。避難訓練をしても、2階建てですぐにグランドに出られるので、あっという間に終わります(笑)。
――ところで、2022年入試は前年比で7%ほど志願者が減ったようですね。
望月 ちょっと厳しかったと思います。21年1学期のサピックスの志望校調査動向では、前年比80%台と大きく減らす勢いでしたから、それでもだいぶ盛り返しました。これには思い当たるところがありました。
毎年、新入生と保護者に志望理由を尋ねていますが、実際に本校の2階建て校舎や広いグラウンドや自然環境を見て「あ、ここだ」と思ったとか、栄光生と直接話してみたりした体験が強い志望動機に結びつくことが分かっていました。学校の一次情報に触れるかどうかでだいぶ異なります。そうした体験の機会が、新型コロナ禍で制約を受けました。
1学期はオンラインで学校説明会を行いましたが、2学期には人数を限った形で対面での説明会と校内案内を開催しました。さらにこの抽選に漏れた方を対象に、ご自身で栄光学園を見て体験してもらうために、休日に自由に校舎や校庭を自由に見学してもらう会も開きました。ご参加くださった方には、自然豊かで広い校地を体感していただけたかと思います。
――それは男の子には大切な要素です。高層ビルなどが目に入りませんしね。
望月 新校舎の設計監修をした卒業生(21期)の隈研吾さんも、中高の6年間が自分の基礎になったと。思いっきり遊べる、周りの余計なものが見えない、“ディズニーランドのような夢の世界”と評する人もいました。
専用の野球場とサッカーコートがあり、7面のテニスコート、体育館も2棟あります。グラウンドの向こうの尾根線の雑木林にも校地がありますが、そこは生物部の聖地です。休み時間に迷って、帰って来られなくなる生徒もいるほどです(笑)。