アメリカ議会予算局(CBO)が1月7日に公表した経済見通しは、2009年のアメリカの実質経済成長率をマイナス2.2%と予測している。GDP項目別の詳細の内訳は公表されていないが、09年における実質個人消費は1%を超える下落を示すと見込んでいる。

 2010年には景気が回復するものの、従来の回復期に見られたような急速な力強い回復は見られず、実質成長率は1.5%に留まるとしている。このため、今後2年間にわたり、潜在産出量水準を平均して6.8%ほど下回る状態が続く。この結果、失業率は、2008年の5.7%から09年には8.3%に、さらに2010年には9.0%(2010年初めには9.2%)にまで上昇するものと見込んでいる。この報告は、「住宅市場の落ち込みによって発生した今回の景気後退が、第二次大戦以降で最悪、かつ最長のものになる」と結論づけている。

 これは、かなり悲観的な見通しだと言うことができよう。これまで公的な機関によって公表された見通しとしては、最も深刻な内容を含むものと言えるのではないだろうか。このような結果となる1つの理由は、この見通しが、景気刺激策が取られることの効果を織り込んでいないことにある(この点が、他の予測との大きな違いである。なお、CBOの予測が景気刺激策を織り込まないことは、法律によって規定されているルールである)。

住宅価格の下落による
住宅投資と耐久消費財の落ち込み

 以下では、この見通しを念頭におきつつ、最近のアメリカの経済情勢と、それが日本に及ぼす影響について考えることとしよう。

 アメリカの実質GDPとその構成要素の推移は、【表1】に示すとおりである。08年第3四半期には、実質GDPが対前期比でマイナス成長となった。実質個人消費支出も、同時にマイナス成長となった。消費支出のなかで、自動車を中心とする耐久財は、07年第4四半期をピークとして継続的に落ち込んでおり、とくに08年第3四半期の落ち込みが大きい。

 実質投資支出は、07年第3四半期をピークとして減少を続けている。なかでも、住宅投資は、07年の初めから継続的、かつ顕著に減少している。

 実質純輸出における赤字幅は、07年の最初から減少傾向を示している。ただし、これをもたらした原因は、輸出が傾向的に増加していることにある。実質輸入額は、減少気味であるとはいえ、顕著な減少傾向を示しているとは言いがたい。

【表1】アメリカの実質GDPとその構成要素の推移(年率換算額、単位:10億ドル)

 以上をまとめれば、これまでの時点で顕著に生じている現象は、住宅価格の下落によって引き起こされたものと言えよう。すなわち、住宅価格下落による直接の影響としてまず住宅建設が減少し、つぎに、住宅を担保とする消費者ローンが急減したことにより、耐久消費財、ことに自動車に対する支出が急減したのである。他方において、輸入が全体として顕著に減少しているとは言いがたい。